第65話.混沌の学園祭①
本日は
澄み切った快晴の空とは対極的に、明導大学は異様な雰囲気に包まれていた。
キャンパス内が神エリアと悪魔エリアに分かれている。
正門から入場すると神エリア、後門から入場すると悪魔エリアだ。
またミスキャンパス出場者である二人がそれぞれの陣営のシンボルとなり、神側には
そして学生や有志がそれぞれの支持者を増やそうと躍起になり、中立らしき立場の人間を見つけては、勧誘していた。
キャンパス内でも敵対する者へのデモ活動も続けられており、それぞれがそれぞれの新世界を求める主張の声は止むことはない。
学生による模擬店も色々出ているようだ。
盛んに呼び込みをしている。
だがその模擬店も、殆どが神と悪魔に因んだ物だった。
「聖水サイダーいかがでしょうか! 闇を吹き飛ばす思いやり溢れる甘さで心が清められますよ!」
「人生疲れた方に福音アロマ、好評発売中でーす! 幸せの香りがあなたの心を必ず癒しますよ!」
「夢城真樹監修のデーモンエクレアはいかがですかー! 甘くて白いシューを覆い隠すように、漆黒の闇チョコがかかった美味しいエクレアです!」
「サバト出版『48の詭弁術』好評発売中でーす! 理屈や論理に強くなる本。これを読めばレスバに負けなくなりますよー!」
この学園祭の様子は、ネットテレビでの中継も行われるようだ。
女性レポーターが学生や来場者にインタビューをして、学園祭の雰囲気を伝えている。
「こちら神側のエリアです。福地聖音さんを応援しているという学生の方に、お話を伺いたいと思います。どうして福地聖音さんを支持されているのですか?」
レポーターは地味な男子学生にマイクを向けた。
「あの、僕は何の取り柄も才能も無い人なんですけど、そんな人間でもありのままで生きてていいんだよって、福地さんがそんなことをアピール動画で言ってたのを聞いて励まされたので……」
学生は目に涙を浮かべながら、熱く語り続ける。
彼の話を聞いた女性レポーターももらい泣きをし、目が潤んでいるようだ。
勿論、悪魔側も中継される。
こちらも女性レポーターが、女子学生二人組にマイクを向けた。
「このTシャツに書かれてる『デモガ』って何ですか?」
「デーモンガールの略です!」
学生二人ははしゃぎながら答えた。
「悪魔を支持するのは何故ですか?」
学生は顔を見合わせる。
「まきちゃんが好きだから」
二人は声を揃えて答えた。
「どういうところが好きですか?」
「かわいいところ。あと綺麗事を言わないで、自分の意見をストレートに言えるところ」
一人が照れながら答える。
「最後にひと言」
マイクを向けられた学生は「悪魔サイコー!」と、カメラの前で叫んだ。
キャンパス内は祭典の歓声と抗争の怒号、デモのシュプレヒコール、これらが入り混じった混沌な様相である。
学内がそんな盛り上がりを見せている頃、
「きよねっち、ごめん。ミスコンのサポーターできなくて。ちょっと同じグループの子が来てるから、そっちの相手をしなくちゃいけなくて……」
「気にせんでええで、ももせ。友情の方を大事にして。グループのみんなと新世界へ行きたいしな」
そう言って、聖音は微笑んだ。
その言葉を聞いて、百瀬は俯いた。
言うまでもなく、アイドルグループの仲間が来ていると言うのは嘘である。
聖音に嘘を吐くのは心苦しかった。
だが、それでも百瀬は多目的室へと向かう。
新世界に邪魔な存在、悪魔の先導者、
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