第58話.終末の気配⑤
学園祭のミス明導に向けて、校内はやはり不穏な雰囲気だ。
人集りが出来ている中で、『聖音神』とプリントされたTシャツを着た男子と、他の男子とが揉み合っている姿を見た。
その男子の後ろにいる女子が「エセ終末論を広げるな!
(きよねっちを支持してくれるのは嬉しいけど……、他人に攻撃的なのはなんか違う気がする)
百瀬はそう思いながらも、自分も緑門莉沙と戦っていることに疚しさを感じた。
(どこか間違ってるのかな。これで理想の新世界はできるの?)
自問自答しながら歩く。
校門のところまで来ると「ももせちゃん」と、自分を呼ぶ声がした。
辺りを見回すと、植えてある大木の陰に夢城真樹が立っている。
彼女は微笑みながら、小さく手招きをした。
百瀬はさっと真樹に駆け寄る。
「何の用よ。学校でアンタと一緒にいるとこ、あんまり見られたくないんだけど。わたしが悪魔側の人間って見られるじゃない」
「ごめんごめん。すぐ終わるから。実は、あなたが前に戦った
真樹が嬉しそうに言う。
「……いつよ?」
「学園祭の日よ。当日、以前、莉沙と戦った多目的室へ行ってちょうだい。ミス明導開催中に彼女を粛清するのよ。彼女はあたしが誘き出しておくから」
「……学園祭の日に? アンタ、ミス明導に参加するんでしょうが。あの女を倒すために、わたしの手伝いしてくれるんじゃなかったの? 約束破るつもり?」
百瀬は少し怒気を込めて訊いた。
「心配しなくても大丈夫よ。ミス明導の開催が1時からでしょ。だから準備に取り掛かる前のお昼の12時に一緒に力を合わせて、さっさと彼女を粛清しましょ。学校中の人がミス明導の方へ関心が向いてるから、その時間は人目につかずに彼女を消せるわ」
夢城真樹はウインクした。
百瀬は真樹をじっと見つめる。
一通り話を聞いたが、なんだか胸がすっきりしない。
「……わかったわ」
真樹の話をところどころ訝しく思いながらも、早く仕事へ向かわなければならない為、
百瀬は彼女の指示を了承し、小さく頷いた。
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