第53話.もう一人の参加者
明導大学ミスキャンパスによる動画合戦は、とうとうテレビワイドショーにまでが取り上げるほど、騒ぎが大きくなっていた。
そしてさらには、有名人や著名人の中にも、この件に触れ、自分はどちらの終末論を支持するか、表明する者までが現れ始めた。
インフルエンサーが口にすれば、現代のネット社会では、拡散のスピードが段違いに速くなる。
終末や新世界というワードと、福地聖音と夢城真樹、その両名を知らない者の方がマイノリティになるほど、世の中に終末論は侵食していった。
こうなればもはや、終末論の真偽や、両者の言い分の正当性など、どうでも良かった。
今の現状を変える為に、自分の信じたいものだけを信じ、それ以外は受け入れず攻撃の対象にする、そんな人間が増殖していった。
そんなバイプレイヤー達の熱狂により、ミス明導は止まることをしらず、加速度的に盛り上がっていった。
ただ、ミス明導の参加者は聖音と真樹だけではない。
もう一人、残っている。
『皆様、お久しぶりです。エントリーナンバー6番、
夏休みの初めに投稿した自己紹介動画から、一切、投稿をしていなかった彼女が、ひさびさに動画を更新した。
透明感ある肌に、シルクのような艶のある髪。
プロのモデル級などと言う陳腐な言葉では凡そ形容しきれない美しい顔とプロポーション。
それだけの容姿を持っているにもかかわらず、ミスコンの話題は聖音と真樹に持っていかれていた為に、彼女は目立つことなく、静かに埋もれていた。
【NEW 鳳谷アリアのアピール動画】
いま、世間で終末論が盛り上がってますよね。
情に溢れる人か、理に従う人か。
まるで神様と悪魔の戦いのよう。
例えるなら、情に溢れる方が神様、理に従う方が悪魔。
言葉の響きでは、神様の方が良いような気がしますが、でも悪魔だからって必ずしも悪いわけじゃないですよ。
勝手に人間がそう思ってるだけで、本当は人間が堕落しないよう見張ってくれている存在なのかもしれません。
ところで、終末のことですが……、わたしは信じます。
きっと人間は誰しも、終末のときに神様につくか、悪魔につくか選択を迫られるんだと思います。
そしてきっとどちらかが正しくて、どちらかが間違ってる。
その答え合わせをするのが終末、ってことなんじゃないかな。
それで間違った方は粛清されて、正しい方が生き残り新世界を創る。
これはもしこの宇宙を創った誰かが決めたこと。
わたしはそんな気がします。
だから、わたしも終末の日までに、神様につくか悪魔につくか、自分の良心に向き合って、じっくり考えたいと思います。
覚悟を決めて終末を迎えるために。
さっき見てみたら、福地聖音さんと夢城真樹さん、イイネの数は拮抗してますね。
ちょうど半々です。
ネットの意見や支持者も同じぐらいじゃないかな。
この感じだと、ミス明導もすごく盛り上がりそうです。
神様も悪魔も、どっちも頑張れ!
もっともっと真剣にぶつかり合って盛り上げないと、自分が終末で消えちゃうよっ!
以上、鳳谷アリアでした。チャオ!』
学園祭実行委員である
ミスコンの参加者が三人に減ってしまったが、気には留めていなかった。
それよりも自分が企画したミス明導が盛り上がりを見せていることに対して、満足げに笑った。
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