第52話.謀略のアピール動画④
当然、二人の元には応援する声もあれば、誹謗中傷も届く。
『うち、匿名で人を攻撃するの止めろって言いましたよね? そういう人は終末で消えますよ』
そう聖音が発言すれば、
『匿名だからこそ言えることがあり、様々な意見が出ます。匿名のデメリットだけ捉えてモノを言うのは知恵の足りない証拠』
と、真樹が次の動画で返す。
また聖音の主張を否定したり、貶したり、罵ったり、真樹側の主張を支持するコメント等に対しては、
『チンチクリンの主張を支持するなら、うちの動画観んで、真樹の動画だけ観とったらええやん。なんでいちいち誹謗中傷のコメントしにくんの? それにうちだけならまだしも、無関係なイエスプの
と、毅然とした態度で、動画内で返す。
だが当然、その動画を観た真樹も黙ってはおらず、煽りに掛かる。
『あたしへの批判、ならびに明導大学不思議研究会への批判も歓迎。ヤキソバは批判と誹謗中傷の境界がないのを良いことに、自分に都合の悪い意見は全て誹謗中傷。そもそも誹謗中傷するなって言ってる人間が他人をアホだの誹謗中傷してる矛盾。滑稽ですわね』
そう次の動画で返し、聖音のアンチを次々と味方に取り込む始末。
こうなると、このやりとりが面白いと徐々に話題になり、ついにはネットニュースにまで載り始めた。
そうなれば、さらにミス明導に興味を持つ人が増えて、さまざまなSNSや掲示板で二人の発言がまとめられ、それに対するコメントも非常に伸び、明導大学ミスキャンパスコンテストは、無関係だった人までどんどん巻き込んで、盛り上がりがヒートアップしていった。
また、その盛り上がりにつれ、現状に不満を抱き、世の中や人生を変えたいと願う層が、二人が声高に唱える終末論を、次々と信じ始めていた。
その数は時間の経過とともに増してゆき、そして増えた彼らは、それぞれの終末論を真樹達の代弁者として本気でネットや街頭で主張し、社会に流布、拡散させるということが各地で起きた。
そんな盛夏の中、不思議研究会の部長、
「もう! あの子は何考えてんのよ!」
最上部長が憤る。
「あの子が批判歓迎なんて不用意なことを言うものだから、不思研へのクレームが、うちの大学にたくさん届いてるのよ!」
最上部長は頭を抱えながら、部室内をウロウロしていた。
「もう! 笑実ちゃんもどうして止めないで、あの子に協力するのよ!」
当然のことながら、怒りの矛先は動画撮影に協力した
「ごめんなさい。まきちゃんが質の良いアピール動画作りたいからって、真面目な顔で言うものだから……」
富樫は、申し訳なさそうにうつむく。
「あのね、まきちゃんは変わっててまともじゃないんだから、そんなの真剣に聞いちゃダメなの! あの子がどれくらい変わってるか知ってる? 以前ね、エクレアをおかずにご飯食べてたのよ!」
最上部長は、夏の暑さと怒りの熱で、顔から汗が滴り落ちてた。
「これで不思議研究会も大学から怒られて、今年で活動中止……ですかね」
メンバーの
「そんなぁ! 歴史ある不思議研究会がわたしの代で終わらせてしまうなんて……」
最上部長は顔を覆った。
「おい、ニュース来たぞ。ミス明導だけどさ、参加者6人中、三人が参加を辞退するだってよ」
メンバーの
「えっ、なんで?」
最上部長が尋ねる。
「さあ、理由までは載ってないが。おそらく、あの二人のやりとりについていけなくなったんじゃないか。それに自分達は全然注目されないし、さらにミス明導の参加者ってだけで、自分達も変に見られる危険があるしよ」
寺元は机にスマホを置き、腕組みをした。
「じゃあ、ミス明導は残った三人の中から選ばれるってことですね」
メンバーの
「もう! この状況を学園祭実行委員の人はどう思ってるのよ!」
最上部長の憤りは収まらない。
校舎外では、セミも鳴き声も太陽の熱も勢いを増している。
これでミス明導の参加者は、三人に絞られた。
福地聖音、夢城真樹。
それと……、あと一人。
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