第36話.疑惑の恋人
《聖音さん、彼女ができました!》
自分達の
(男っていつまで経っても子どもやな)
聖音はそう思い、メッセージを見ながら、つい笑ってしまう。
《良かったですね。彼女さん大切にしてあげて》
メッセージを返すと、すぐに返信が来た。
《はい! すごく優しい子なんで。新世界にもふさわしい女性です》
純真の彼女にも奇能を与えて先導者にしようかと聖音が思った時、続けてメッセージが届いた。
《しかも彼女、大学生で聖音さんと同じ大学なんですよ。顔見知りかもしれませんね》
同じ
聖音の脳内に何か引っかかるものがあった。
自分達の先導者に新しく出来た恋人が、自分と同じ大学に通う女子大生。
別にありえないわけではないが、何か気にかかる。
その彼女について、純真にもっと訊くことにした。
純真からのメッセージによると、彼女の名前は
出会いは帰宅時に体調不良で
そして、彼女は明導大学で演劇部に所属しているとのこと。
明導大学演劇部と言えば、二人の部員が行方不明になっている。
聖音は演劇部に
(偶然……やんな?)
聖音を嫌な予感が襲う。
まずはその天象舞を調べて見ることが必要だと思った。
《もうちょっと相手のことよく知ってから、付き合った方が良いんと違う?》
念の為に純真にメッセージを送る。
《そんな結婚するわけじゃないのに。オーバーですよ・笑》
純真には聖音の憂いは伝わらなかったようだ。
とは言うものの、自分の悪い予感だけで純真の恋愛を止めるわけにはいかない。
成り行きを見守りつつ、天象舞を探ろうと思ったとき「福地さん!」と、不意に聖音を呼ぶ声がした。
「いやぁ、見つかってよかった」
そう言って近づいて来たのは、文化祭実行委員の
「ああ、ミスコンの人か。何の用?」
「もうすぐ夏休みですよね。実はミス明導のアピール合戦があるんですよ。その概要をお持ちしまして」
「なんやねん、それ?」
「この夏休みの間に、ミス明導参加者は、特設サイトにアピール動画を投稿して、応援人数や動画へのGOODの数で競い合ってもらいます。別に数が少なくても失格になることはありませんが、本戦でも一般投票があるので、この夏休みの間により多くのファンを獲得しておくと有利ですよ。それに、もしこれで夢城さんとの人気に大きく差をつければ福地さんの目的達成に近づきますし、あの人を悔しがらせるチャンスですよ」
正岡がニヤついた顔で言う。
「そうやね。夏休みの間にあいつとうちの格の違いを見せつけてやれば、きっと戦意喪失して休み明けにはリタイアしよるわ」
「そうでしょう。こちらが資料一覧になりますので、目を通しておいてください。夏休み初日に1回目の動画の投稿していただきますので、それまでに撮影しておいてくださいね」
「面倒やけどしゃーない」
「よろしくお願いします。それでは僕、これから夢城さんのところにも資料を持って行きますので」
「噛みつかれんよう気をつけてな」
正岡は丁寧に聖音に頭を下げると、顔を綻ばせて聖音の元から去っていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます