第22話.悪魔の蠢動

 サバト人生相談所にやってきた二人組。

 夢城真樹ゆめしろまき鬼童院戒きどういんかいである。


「もう、どこにいるのかと思ったら、警察に見つからないように居場所をコロコロ変えてたのよ」


 怒っている真樹は頬を膨らませて腕を組んだ。


「やっぱり今の世界ってのは理不尽だねぇ、贄村のダンナよ。あんなクズのような人間がのうのうと生きてられるなんて。新世界が待ち遠しいぜ」


「何をやった……?」


 真樹は牛丼屋での一件の顛末を相談所の所長、贄村囚にえむらしゅうに話した。


「どうであれ、君が見つかり何よりだ……」


 贄村は椅子に深く腰を掛けた。


「ところで、着物を着た先導者と名乗る年端もいかねえ小娘と出会ったぜ」


 鬼童院が贄村達に話したのは、牛丼屋の帰りに出会い、僅かばかり拳を交えた南善寺小咲芽なんぜんじこさめについて。


「そんな子がいるの、知らなかったわ」


 真樹が驚いた表情を見せる。


「どうやら我々が存在を把握していない天園達の先導者がいるようだ……」


「嫌ねぇ、陰でこそこそエセ終末論を拡散されてるのは」


 真樹がため息を吐いた。


「そこでだ、鬼童院。君は元探偵だったな?」


「今も探偵だぜ? ただ仕事がないだけで」


「その少女のようにまだ我々が認知していない先導者、およびその活動について探偵であるお前の力を生かし調べてほしい」


 贄村が相談所へ鬼童院を呼んだ用件を伝える。


「任せてくれ。世の中の綺麗事に理不尽に苦しめられてる連中を救ってやりたい、それが俺の目的よ。贄村さん、アンタこそ俺が求めてる理想郷を創ってくれる存在だよ。いくらでも協力するぜ。たとえアンタらが悪魔だったとしても」


「ああ、期待している……。それともう一つ……」


 贄村は手招きして鬼童院を呼んだ。

 近寄ってきた彼にパソコン上で動画を再生し見せる。


 それは先日投稿された、砌百瀬みぎりももせが中心となって終末論について語っていたイエロースプリング43の公式動画。


「これがどうかしたのかい?」


「この人物についても調べて欲しい……」


 贄村はパソコンの画面に向け指をさした。


「こいつを……?」


 鬼童院は贄村の指先の人物を見て訊く。


 贄村は静かに頷いた。






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