第17話.学園祭実行委員の勧誘
再び学食で
「エセ終末論で勝手なことしとるようやないの」
そう言って、聖音は真樹の隣に肉じゃが定食の乗ったトレーを置く。
「エセ終末論を振りかざしてんのはそっちじゃないの。間違った終末論で粛清して問題起こすの止めてくれない? 迷惑だわ」
そう言って、真樹はハンバーグカレーを掬ったスプーンを口に運ぶ。
「はぁ? アンタんとこの先導者の方が問題行動多いんちゃうん? この学校の生徒まで粛清したやろ。アホなことしてくれるで、ホンマ。先導者に選ばれたって勘違いしとう子も可哀想やな。実は自分が終末には消される存在やっていうのも知らんで」
「その言葉、そっくりそのまま、リボンまでつけてお返しするわ」
二人はいがみ合って、不快な昼食の時間を過ごす。
「あの、お食事中、すみません」
その時、一人の男子学生が声をかけてきた。
真樹と聖音、二人の視線がジロリとその男子へ注がれる。
彼は二人の圧に一瞬たじろいだ。
「あの、僕、学園祭実行委員の
その銀縁の眼鏡をかけた正岡と言う男子は、恐る恐る名乗った。
「その学園祭の人が何の用やねん?」
聖音が尋ねる。
「実は今年、第一回目のミスキャンパスを行うことになりまして。何事も初めが大事ということで、ミスコンを盛り上げるために参加してくれるレベルの高い女子をスカウトしているんです。あの……、そちらの方、夢城さんですよね?」
正岡は真樹へ視線を向けた。
「あたし? そうだけど」
「あの実は、校内で不思研の夢城さんが可愛いと噂になってまして。それで不思研の稲田と僕、友達なんですけど、どんな人なのか聞いたら、確かにアイドルにもなれるほどの容姿だと。それなら、そんな魅力的な夢城さんに参加してもらえれば、第一回目のミスコンがすごく盛り上がるだろうなと思って、それで参加のお願いをしにきまして……」
「まあ、あたしが可愛くて魅力的って言うのは事実だけど」
真樹は頷く。
「はぁ? これが可愛くて魅力的!? 世の中、美的センスのない男が増えた言うことやな」
聖音の目は吊り上がっていた。
「あの、そちらのお友達の方もすごく魅力的なので、良かったらお二人で参加頂けませんか?」
正岡は聖音も勧誘した。
「友達ちゃうし。それにうち、女性を見た目で評価するようなもん嫌いやねん。今の時代、そうゆうの廃止の流れやで。なに時代遅れなこと始めようとしとうねん」
「まあ、こんなの参加させても審査で落ちるレベルよ。あたしは優勝を狙えるけど。でも参加しても一円の得にもならないようなの、興味ないわ」
真樹はコップの水をおもむろに飲んだ。
「はぁ? うちと一緒に参加したら、公衆の面前でレベルの違いを見せつけられて、アンタが大恥かくだけやで。明日から学校に来られへんようになるから止めといた方がええな」
「思い上がりもそこまで行くと病気ね。じゃあ白黒つけようじゃないの。実行委員さん、こいつとあたし、どっちが魅力的だと思う?」
「そうやそうや。遠慮せずにはっきり答えて?」
正岡は二人に問い詰められた。
「えっ……、いや二人ともそれぞれ魅力的で……」
答えを濁す。
「あたしは二値で話をしてるのよ。つまりこいつかあたしか、排他的論理和でしか答えはないわけ。マストシステムで答えなさい」
真樹に問い質され、正岡は答えに窮する。
「あの、じゃあ、あくまでも僕個人の意見と言うことで、だからその、僕の答えがお二人の優劣にはならないと言う条件なら……」
「それで良いから答えなさい」
「そうやそうや、答えて」
二人の視線が正岡に集中する。
「あの、僕の好みでは、その、夢城さんの方……です」
それを聞いた真樹は両手を挙げた。
「ほーら、見なさい!」
小躍りし勝ち誇る。
ついでに聖音に向けて舌を出す。
勿論、一方の聖音は納得がいくはずもなく、
「はぁ!?」
と眉間に皺を寄せる。
「いやっ、だからあくまで僕個人の感想で、これが大勢のアンケートだと結果が変わるかもしれませんし……」
「変わるに決まってるやん。一人の意見なんてあてにならんわ。わかった、それじゃ二人でミスコン出て、他の人の評価も聞いて白黒はっきり決着つけようやないの」
聖音は真樹に参加を煽った。
「必要ないわよ。結果は同じだから。出るだけ時間の無駄」
真樹は清音に向け、ちろちろ舌を出し入れして馬鹿にする。
「はあ? 大観衆の前でうちに負けるんが怖くて逃げる気?」
「はいはい、なんとでもいいなさい。あなたの負けは負けだから。それじゃご馳走さまでした」
真樹は意気揚々とトレイを持って席から離れていった。
取り残された聖音は切歯扼腕し肩を震わせる。
そして正岡を睨みつけた。
「なあ、うち出たる。でも勘違いしたらあかんで。ミスコンみたいなのを認めたわけやないからな。あくまであのチンチクリンに事実を教え込むためやからな。あいつもミスコンの舞台に引っ張り上げて、大勢の人の前でどっちが上か見せつけてやんねん」
怒りの表情で参加の意思を示した。
「は、はぁ……」
聖音の迫力に正岡は思わず後ずさりをするも、とりあえず一人は参加者を確保することができて、内心胸を撫で下ろす正岡だった。
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