第6話.猟犬の女(天象舞)①

 本当は行きたくなかった。


 合コンなんて。


 でも同じ演劇部の郷美さとみ流衣るいが、人数合わせでどうしてもって私を誘うから。


 人に頼まれるときっぱり断り切れないのが私のダメなところ。


 こんなことを今まで何度も繰り返して生きてきた。


 この性格を早く直したいんだけど……。


 初対面の人といきなり仲良くするのは苦手。


 しかも相手がグイグイくるタイプの男性ってなるとなおさら。


 私にとって今日が生まれて初めての合コン。


 だいたいは話に聞いてるけど、合コンのノリは私に合わない気がした。


「じゃあまずはおたがいに自己紹介から!」


 一人の男の子がそう言うと、イェーイ!ってみんなの合わせた掛け声と拍手が湧いた。


 私も控え目だけど、一応みんなに合わせる。


 それでもノリが悪い女って、少しは思われたかもしれない。


 みんな変わった趣味を言ったり、ギャグを言ったり、それぞれ個性的な自己紹介をする。


 郷美と流衣の自己紹介が終わり、私の番が回ってきた。


「あの、天象舞てんしょうまいです。よろしくお願いします」


 シンプルで大人しめのテンションの、周りから浮いた挨拶をする。


 一瞬、間があった後、イェーイ!って掛け声と拍手が起きた。


「おー、舞ちゃんかぁ。ショートボブが似合ってるし、なんかすごく透明感っての? があるよね。もしかしてお嬢様?」


 私の前の男の子が言った。


「いえ、違います……」


 私は否定する。


 たしかにオシャレな郷美や流衣とは違って、私は服装も地味だ。


 私が参加して、なんだか申し訳ない気持ちになってきた。


 それから合コンは、私を除いてワイワイ盛り上がっていった。


 そんな中、私はお酒を少しずつ口に含み、ただみんなの話に頷くだけで時間を過ごす。


 メンバーのテンションもどんどん上がっていき、そのうち男の子の一人が大声で言った。


「さあ、盛り上がって参りましたので、それじゃ『成年の主張ゲーム』始めましょー!」







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る