第5話.不思議研究会のメンバー
『近頃、発生しています行方不明事件ですが、当大学からも2名の学生の行方が分からなくなっております。社会学部2年の土屋郷美さん、桐山流衣さんの2名です。居所を知っている方、また見かけられた方は速やかに警察か大学へ連絡してください。
また、このような事件が続いておりますが、現在、行方不明の原因がわかっておりません。
その為、対応が難しい事案ですが、犯罪被害防止を踏まえ、大学の方でガイドラインを制作致しましたので、全学生の皆さんは必ずお読みくださいますようお願いします』
大学の掲示板に、このような内容の張り紙がされていた。
この行方不明事件のせいで、 今日は校内に警察が捜査に訪れたり、マスコミが取材に来たりで、校内が騒がしい。
次は自分が行方不明になるかもしれないという恐怖からか、漂う不安に学生も心なしか浮足立っている様子だ。
だが、中には非日常的な雰囲気を味わい、はしゃぐ者も見られる。
(あ、そろそろ行かなきゃ)
真樹はスマホで時刻を確認すると、部室へ向かうことにした。
真樹は大学のサークル、不思議研究会に所属している。
世界の妖怪、UMA、オーパーツ、心霊現象、未解決事件など、広く世の中の不思議なものを同好が集まって調査しているサークルだ。
とは言っても、誰も霊能力や超能力を持っているわけでもなく、過去に何か謎を解明できたわけでもない、ゆるく活動しているサークルである。
室内には部長以外のメンバーがすでに集まっていた。
「おつかれさまです」
真樹はみんなにサムズアップで挨拶する。
不思議研究サークルのメンバーは真樹を入れて、男子3名、女子3名の計6人。
男子は、長髪でニヒルな雰囲気の
女子は真樹のほかに、陽気で名前の通りよく笑う、ムードメーカーで少しそそっかしい性格の
それと、
「遅れてごめんなさい」
謝りながら入室してきた、深窓の令嬢といった雰囲気を纏った
この三名である。
「さて、今日は本格的に、今年度のサークルの活動テーマを決めようと思いますが……」
みんなの視線が一斉に部長に集まる。
「私は来年卒業なので、このサークルの活動も今年で最後です。その最後の年にどうしてもやりたいテーマができました。みんなも想像つくと思うけど……」
「わかってますわ」
真樹が真剣な顔つきで答えた。
最上部長は静かに頷き、
「ありがとう、まきちゃん。それじゃ、まきちゃんからみんなに発表してあげて」
と促した。
真樹も黙って頷き、一呼吸置くと、
「……カッパの捕獲、ですわね」
と答えた。
「いやっ、違うし……。第一、私カッパを捕まえたいなんて一度も言ったことないし……」
最上部長は困惑の表情を見せた。
「あら、はずしましたわね」
真樹は照れ笑いを浮かべて、ちろっと舌を出す。
「あの、みんな知ってるように、いまこの地域で続いてる行方不明事件。有名ワォチューバー、通勤中のサラリーマン、そして、とうとううちの学校からも出たじゃない?まるで現代の神隠しのようなこの件。解決する糸口だけでも良いから、私たちの手で解明してみたいの。それに多くの人が、次は自分じゃないかなって不安に感じ始めていると思う。私たちの研究を、そんな人たちの安心のために少しでも役立てたい。それがこのサークルの意義でもあると思う」
最上部長はメンバーに提案した。
「そうだよ! うちがやらなくてどこがやるのよ! それに解決したら警察から表彰されるよ!」
富樫が椅子から腰を上げ、テンション高く言った。
「まあ、表彰は別に良いけど……」
最上部長は苦笑いしている。
「いままで色んな謎に挑んできたけど、一度も満足のいく結果を得られたことがないじゃない? これは人助けにもなるし、私の最後の年だから、学生生活の集大成としてこの事件、解明してみたい」
最上部長は熱く語った。
「でも、けっこう危険な匂いがしますよ。もし人為的な事件で、誰か犯人がいるなら真相に近づきすぎると僕たちも行方不明で消される可能性があるかも……」
本庄が心配そうに言う。
「そう。この事件の真相が何なのかわからないから、そういうリスクはあると思う。だから無理強いはしないけど……」
最上部長の声からも不安の色が感じられたが、
「いや、やってみようや。リスクがある方がやり甲斐があるぜ」
寺元が腕組みをしながらハスキー声で言った。
「もし救えるのなら、行方不明になった二人の学生も救いたい。危険が身近に感じられるようになったいま、意義のある研究だと思う」
部長の熱意に、
「あたしも行方不明事件の解明、賛成ですわ」
真樹もまっすぐ挙手をし、賛成した。
その他全員の賛成を取り付け、不思議サークルは活動テーマを行方不明事件を追うに決定し、その日は終了した。
真樹はサークル終了後、ある人と待ち合わせをしていたので、メンバーと離れ大学構内の中庭へと向かった。
ベンチに一人で座っている女に声をかける。
「待たせちゃったかしら、舞ちゃん」
舞と呼ばれた女は振り向いた。
「ううん、私もさっき来たとこ」
その女は微笑む。
「どうだったかしら? 奇能を使った感じは?」
真樹は尋ねた。
「うん……。すっきりした。でも粛清のあと、怖くなってしばらく震えが止まらなかったけど」
そう言って、舞という女は肩をすくめた。
「そう、それは良かったわ。でも粛清は終末が始まるまで、あの二人だけにしといたほうがいいわよ。騒ぎが大きくなると面倒だわ。ほら、莉沙先輩がまたひとり、ワォチューバーを粛清してニュースになってるでしょう。実際、あたしのサークルも行方不明事件を調査するなんて言い出してるわ」
真樹がそう言うと、舞という女は黙って頷いた。
真樹と同学年の明導大学生。
そして悪魔側の
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