第3話 僕の思い

この弁当屋では季節に合わせた弁当が販売している。

4月には花見に合わせた弁当

6月には夏のキャンプや夏休みに合わせた弁当

10月にはハロウィンのかぼちゃたっぷりの弁当

12月はクリスマス向けのオードブル


まあこんな感じで毎年4回ほど新商品のメニュー表が本部から送られてくる。

この季節の弁当というのは正直あまり、売り上げには繋がっていない。

都内などの弁当屋であれば家族連れや若い女性をターゲットにできるが

僕の店舗の主要な顧客は20代から40代の男性である。

つまり、この季節の弁当はかれらには受けないのは明確な事実なのである。

しかし、毎年し、本部はこの季節の弁当の売り上げを上げるように指示してくる。

この季節の弁当が僕の大きな悩みの種になるのは明白である。


てか、本部も気づいて欲しい。

そもそも弁当を買いに来るということは温かい飯を作りながら、微笑んでくれる可愛い彼女がいないからである。

僕だって可愛い彼女が飯を作って入れば、わざわざ毎日知らないだれかが作った弁当を買いに来たりなどしないのである。

そんな彼らに、仕打ちのようにクリスマスだハロウィンだなどと、日向ものがするようなことをアピールした弁当を売るなどナンセンスである。


まあ、そんな文句、一店長が言えるわけもなく、僕は今年も店内にハロウィンの飾り付けをおこなう。

常連客が店内の飾りをみて、「あっもうすぐ、ハロウィンですもんね」

と苦笑いしてきたら、僕はいつもこう答える

「いつもと変わらない日常が明日もくるだけですけどね」

せめて、僕だけは彼らの味方でありたい。

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とある弁当屋 雪になりたい @asitakamome

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