第4話 『未来の話』

 二人の隊長が出会ってから半年が過ぎた。百二十年の歴史、その半年。短い時間だがそれでも人と人が心を開くには十分な時間だった。

 また戦況も大きく変わっていた。約百二十年間、均衡を保ち続けたが崩れ始めた。敵国が新たなる武器を発明したと言う。銃すらも凌駕するほどの武器、敵国が言うには電磁投射装置が開発された。

 これは遠距離に広範囲に多大な被害を与える最悪の機械である。


 夜になると歌を歌い、昔話をしたりと。そしてかつての家族の話。小隊長の歌っている歌は母がいつも歌っていたらしい。

 

 そんな戦争の中でも平穏な日々が続いた。だがそれは夢のような時間であり、夢はいつか終わる。


 いつもの場所では無く、二人は天幕の中に二人っきりでいた。

 隊長は普段表情をあまり変えないがしかし今日の隊長は少し違った。何か悔しそうな何かを恨むようなそんな表情だった。


 「ただ今第一小隊、帰還しました」


 敬礼し、いつもと違う雰囲気に戸惑う小隊長。

 いつもとは違う。ここは年齢では無く役職によって決まる場所。当然、今までのような無礼は許されない。


 第一小隊は先ほどまで見回りが終わり、他の兵士たちも休んでいる。

 小隊長も疲れているだろうがそれを顔に出さずに凛々しく直立している。


 「先ほど本部から通達が入った。我々の兵、全軍を利用し、戦線を大幅に上げるとの事だ」


 「それはあの電磁投射装置の射程距離に自ら入れって事ですか」


 「そうだ。今日はそれだけだ。もう下がっていいぞ」


 「……はい」


 「いつもの場所で待ってろ」


 何も言わずに小隊長は天幕から出た。


 隊長は小隊長と初めて話した場所に足を運ぶ。来ないと思っていたが先に小隊長はいた。


 「なんなんですかあの作戦。その作戦は作戦などではありません!まるで死ねって言われてるみたいです」


 「その考えは俺も同感だ」


 小隊長は初めて隊長が一人称を俺と言ったのを聞いて驚いた。


 「お前にはこの作戦から降りてもらう」


 「意味が分かりません。私は小隊長です!」


 「代わりなら俺がやってやる。お前は女だ。女は戦っちゃいけない。戦場から離れろ。これは隊長命令だ」


 「なんでですか……。私では務まりませんか」


 「ああ務まらない。だから代わりに俺がやる。お前は故郷にでも帰れ」


 次の日、小隊長は戦場から離れた。


 作戦開始まであと数分。小隊を指揮することになった隊長は空を見る。


 「全軍!出撃ー!」


 特攻と言えるほどの無茶な行為に敵国は一時混乱したが推測通り、電磁投射装置を使い、殲滅した。

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戦恋歌 ノエル @1225hiro

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