第3話 『捨てられた戦場』

 周りを見ても年は離れている。ましてや隊長クラスでいる筈もない。

 隊長クラスの年齢は若くても三十代前半、普通は四十代が常識だ。


 では何故その若さで隊長まで上り詰めたのか。


 「どのようにそこまで出世したのでしょうか」


 度々、こうして二人で若い隊長達は話し合っていた。


 知りたいか?


 そう隊長は小隊長に問いかける。隊長の表情は同じ年齢の筈なのにそれを全く感じさせない。まるで大人と話しているかのようなまさしく隊長の雰囲気だった。


 答えるのに一瞬戸惑う。だけど


 知りたいです。聞いて後悔するより聞かずに後悔する方が嫌です。


 そう答えた。別に後悔する運命だったとしてもどんな後悔をするかは私が決める。


 「じゃ話すよ」


 話を要約するとこうだ。


 この戦場に勝ち負けはそこまで求められていない。負けるな、ただそれだけ。ここに集められたのは身寄りが無いものそういう者達が集められている。


 死んでも誰も悲しまない。誰にも迷惑にもならない。『捨てられた戦場アウトフィールド


 勝ったらラッキー、そんな風に見られている。じゃなんで今は負けてないのか。簡単だよ。敵国も別にここから攻める必要が無いからだよ。だから敵国もここにはあまり戦力を持ってこない。


 それを聞いて小隊長は絶句した。確かに自分も身寄りが無い。死んでも困らない。

 だけどこんな事があっていいのか。


 隊長は小隊長のことを見ずに続ける。


 私が隊長になったのは偶然この事を知ってしまったからだ。偶然なのか、今となっては仕組まれていたのかもしれない。

 私は奇しくも指揮としての力があった。上層部にとってこれほど使いやすい駒はないだろう。

 この事は私と君しか知らない事実だ。


 そう言い終えると小隊長は放心状態になっていた。


 「さっき、言ってたよね。こんな事があっていいのかって。それが戦争なんだよ。結局は勝ち負け、過程なんて誰も覚えてない」


 今日の空は少しだけ曇っていた。









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