第2話 『若き二人の隊長』

 星空を眺め、物思いにふける。何も考えないこの時間、このような時間を平和だと思う。


 しかし、何も考えずとも外からは常に情報は入ってくる。

 声だ、女の声。歌声が聞こえる。近くから聞こえる。場所はすぐに分かった。すぐ近くにある茂みの中、少し開けた場所。そこにいた。そこに足を踏み入れる。すると足が木の枝を踏んだのかパキッ!と音が響いた。


 その音に気づいたのか歌声は途切れる。


 「すまない。邪魔をした」


 「隊長……すみません。夜に歌は非常識でした」


 そこにいたのは隊長と同じくらいの若さを持つ小さな少女だった。下は軍服であり、上半身は白のシャツを着ていた。また月の光が少女の銀髪を照らしており、神秘的なものと言えるものだった。


 「構わないさ。他の兵士たちも馬鹿騒ぎしている。君の、第一小隊長の歌声の方を聞いていた方が有意義だ」


 「ありがとうございます。そういえば隊長もお酒をお飲みにならないんですね」


 「ああ、この年で酒を飲むのは少しな。あと上官とあろうものが部下たちに醜態を見せるわけにはいかないからな。それにいつ襲ってくるのか分からないのに呑気に飲んでいられない」


 「私も同じですね。隊長と私の年齢って確か同じでしたよね」


 年齢が同じなのか所々に小隊長の言葉遣いに乱れを感じるが今は戦っている最中では無い。


 「そうだな、今年で一八歳だ。ところでさっきの曲をもう一度歌ってはもらえないだろうか」


 歌を途中で止めてしまったからなのかそれとも自分が聞きたいのかわからない。しかし、歌声が聞こえたとき見惚れてしまった。見たわけでは無く聞いただけなのだがこの思いを表すならこれが正しいと思う。


 「分かりました」


 小隊長は歌う。その歌う姿は月よりも綺麗で、星よりも輝いていた。心に染みるような歌声ばこの終わりの無い戦いエンドゲームとは場違いと言えるほどまるで劇場にいるようなそんな錯覚を起こさせた。


 「ありがとう、とても素晴らしい歌声だった」


 「こちらこそありがとうございます」


 若き二人の隊長はこれからの夜ここで話すようになった。

 


 


 


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