第15話 真実の愛をくれないと、イタズラしちゃうぞっ

 ぱこぱこぱこ。ごろごろごろ。ぴょこ。「止まって欲しいっす」ぶるぶるぶる。

 「お帰りなさいませ、お嬢様」ぴょこ。「有難うっす。エルンスト」


 「お帰りなさいっ、お嬢様」

 「ウルリッヒ、今帰りました。もう私の背を追い越してしまったのですね」

 「はいっ、父が天に召され、旦那様が天に召され、もうずいぶんとちます」


 「ナイトハルトの後を継いでくれて有難う」

 「クララお嬢様、マールエルお嬢様をの当りにして、神様の不在を信じる者などおりやせん」


 ぴょこ。「エルンストの後ろに隠れている小さな子は誰っすか」

 「マールエルお嬢様、私にも跡取りを授かる事ができました。ほら、オスカー、天使様のマールエルお嬢様だ。ご挨拶をしなさい」


 とんとん。ぴょこ。「オスカー・アイゼナッハ、ただいま、私はマールエル・ヨランカ・ピュージンゲン。宜しくっす」

 「・・・礼拝堂に描かれている天使様」ぴょこん!「そうっすよぉ~」


 「じゃ、…光の壁をつくれるの」ぴょこん!「できるっすっ」

 「やってやってぇ~」ごちん。「オスカーっ、…いずれお示し下さる」


 「お嬢様、それより早く奥様のもとへ、神様のおぼしで、お嬢様達がお帰りになられるまで、とどまっておいでです」


 とんとん。「マール、急ぎましょう。ママの所へ、後を頼みます。エルンスト」

 ぴょこん!「うん、ママぁ~、…オスカー、後でお話しするっす」「うん」

 たたたたたたたた。



 「私達は、パパもママも、神様に召されるのを見送ったと、ナイトハルトもエルンストも、みんなみんな老いさらばえて、逝くのを見送る事しか出来んかったとぉー、…私も、マールもずぅ~~~っと今の姿のままやけん。・・・いたかぁ~」

 ぴょこ。「私も、…会いたいっす、パパとママに」


 二人が繋ぐ俺の手を強くにぎる。俺にはただ話を聞く事しか出来ない。

 「…なぁ~、マール、死んだ人には会えないのか。神様のそばいるんだろう」

 ぴょこん!「それは、…大天使様でもかなえる事は出来ないっす」


 部屋は、元に戻っていた。

 父さん母さんがいなくなり、親戚しんせきや友達、知人がどんどんいなくなり、姿が変わらないから、一か所にとどまる事が出来ない。

 ただ独り永遠にその中で生きる。


 俺は、二人が過ごして来た時、これからも訪れる悠久ゆうきゅうの時間、その一瞬のまたたきの中にいる。

 あと何年かすれば、クララもマールも、周りの女の子達と差が出て、成長しない二人は、この家にいられなくなる。


 「ねぇ~あき、私の事かんと」「あぁ~~~、好きだよ」「う~~~」

 ぴょこん!「私の事は好きっすか」「あぁ~~~、好きだよ」「う~~~」


 「これはもう一度、たださんといけんっ」

 ぴょこん!「愛は天使にとって最も重大な事っす、たださないと駄目っすねっ」


 「と、ただすって、…何を」

 ぴょこん!「クララ、扉側のこっちに来るっす」

 「うん、待ってぇ~」


 クララが立ち上がり、マールが座る扉側に行って、隣に座り直す。

 「絶対がさへんっ」ぴょこん!!!「がさないっすよぉ~」

 「なっ、何だよ、二人共」


 「いいすっかクララ」「うん、よかっ」すぅ~~~~~。


 「「Trick or True love(真実の愛をくれないと、イタズラしちゃうぞっ)」」


 うっ、又、マールまで。

 「・・・しっ」「しっ」ぴょこん!「しっ」顔、…寄せるなよ。

 「・・・しっ」「どげんしたとっ、言えんと」

 ぴょこん!「はっ、はっきり、…言って欲しいっす」


 それ以上近付いたら、…ちゅうするぞっ、ちゅう。

 「い、いたずらで」「「うがあーーーーーーーーーーーーーーーーっ」」

 「どげんしたらよかとっ、マールっ」ぴょこん!「素直じゃないっすっ」


 「ちゅうしてちゅう」「「きゃぁっ」」


 「ほれほれぇ~」「ちっ、近寄らんでぇ~」ぴょこん!「はっ、離れるっすっ」


 「何でだよ。いたずらしろよ。ほぉ~~~れぇ~~~」

 「「いやぁ~~~~~~~~~~~~」」


 だだだ、どたどた。かちゃっ。だだだだだ、どたどたどた。逃げるなよっ。

 「ママっ、ママっ、ママっ」

 ぴょこん!!!「ママさんっ、ママさんっ、ママさんっ、」


 「あきが、あきが、変ないたずらしろって迫って来るとぉー」

 言って無いっ。


 ぴょこん!「あきが言葉に出来ない様な事をしろって迫って来るっすぅー」

 言って無いだろっ。


 ・・・俺が必ず呪いをいてやるっ。

 ・・・ちょっと待て、マールが帰ってしまう。う~ん、二人じゃ駄目なのか。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

何でもない日ハロウィン EPISODE 0 ~邪女神2柱、名状し難いエヌオカエヌオカと鬼天竺鼠 混沌を呼ぶ~ パパスリア @inOZ

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ