第14話 呪いが齎すもの

 「これはしたい事しないと、いが残る」

 「あき、目がこわか」ぴょこん!「手っ、手をはなして欲しいっす」


 「って言うか、どうして一昨日おとといから一年後」

 ぴょこん!「…クララの呪いは、神様から人々への最後の慈悲じひでもあるっす」

 「私、聞いとらんよ」「どう言う事だよマール」


 ぴょこ。「神様は、いがみ合い、うばい合い、殺し合う人々をお見捨みすてになったっす。でもあの時、クララの真摯しんしな祈りをお聞きになり、例え一人でもtrue love(真実の愛)を持つ者がいるのなら、ほろぼす事をとどめ様とお考えになったす」


 「聞いとらん聞いとらんよ。もし私が、true love(真実の愛)を見つける事ができんかった時は」

 「なぁ~、チュプヌコとか言ってなかったか。なぁ~、なぁ~、マール」

 ぴょこん!「い、今いる人々はほろび、クララは独り彷徨さまようっす」


 「ん~~~、もう~いいよ。マールがいるから、一人じゃないだろう」

 ぴょこん!「役目を終えたら帰るっすよ」

 「ひどかっ、独りにせんでっ、ねぇ~マールぅ~」


 ぴょこん!「時々、天使部のみんなと遊びに来てあげるっす」

 「つめたかぁ~、ずぅ~っと一緒におったとにぃ~、帰らんでぇ~」


 ぴょこ。「あっ、もう少し言うと、クララの様に、神様に選ばれた者以外はほろぶっす」

 「どう言う事だ」


 ぴょこ。「このほろびが、やり直す事を目的としているなら、神様は誰か一人、男の人も選んでいるかも知れないっす。クララは新たなイヴになるっす」

 「え~~~、全然知らん男の人と二人っきりとか嫌なのだ。マールば見て、あきがはっきりせんけん、こげんなると」


 「嫌っ、俺は悪くない。…それに何か引っかかるんだが、…おっ、そうだマール、クララが呪いを受けた日から一年なんだよな」

 ぴょこ。「そうっすよ」


 「マール、計算が合わんと、もうマールと何百年も一緒におるよぉ~」

 「ならもう通り過ぎてるじゃん、回避かいひしたんじゃないのか」


 ぴょこ。「まだ二日目っす、う~んもう少し詳しく言うと42時間ぐらいしか過ぎてないっす。私が新学年に上がるまでっすよ。留年はしたくないっすからね。出来れば早めにお願いしたいっす」

 「話がかみ合わないな」「可笑おかしかぁ~」


 ぴょこん!「おっ、私の言ってる一年は、天界の時間っす」

 「じゃぁ~さっきの、『人類滅亡まで、あと363日』、はどうなると」


 ぴょこん!「待つっす、こっちの時間に換算するっす」

 「電卓いるか」ぴょこん!「天使ですから、暗算得意っすっ」「お~凄かぁ~」


 ぴょこ~ん!!!「ととのったっす、だいたい14万5千年後っすね」

 「ラッパいらねっ、今のままなら、それを待たずにほろぶっ」


 「それまでマールは、いてくれると」ぴょこん!「いるっすよっ」

 「良かったぁ~、独りは寂しか」「良くねーよ」



 「あのやからから身を隠すには、商売を学ぶ為、各支店の視察しさつに向かうと言い、この地を離れるしか方法がありません。既に各支店の者達へ厳しい通達を出しております」


 「嗚呼、クララ、マール、私の大切な娘達」「「ママ」」

 「クララ、マール、気を付けるんだよ」

 「パパ」ぴょこん!「パパ、私がいるから大丈夫っすっ」


 「本当に大丈夫なの二人だけで」

 「ママ、わたくしは呪いを受けています。決して死が訪れない呪いを」

 ぴょこん!「そうっす、格別かくべつの加護を受けているっす、そして私は天使っす、神様の加護を受けているっす、私達に害を成そうとすれば、必ず神罰が下るっす」


 「お嬢様、これがピュージンゲン商会の各地の支店の場所と、出来るだけ詳しい地図で御座います」

 「有難うナイトハルト」


 「お嬢様ぁ~、馬車のご用意がととのいましたで御座います」

 ぴょこん!「有難うっす、エルンスト」


 ぶひひひひ~。「しかし良い馬ですねぇ~」ぴょこん!「天馬っすっ」

 「それはまた、凄いですねぇ~」

 ぴょこ。「私達には力がないっすから、泥濘ぬかるんだ道は空を行くっす」


 すりすり。「パパ、ママ、お婿むこさんを見つけて帰ってきます」

 ぴょこ。すりすり。「パパ、ママ、true love(真実の愛)を探しに行ってくるっす」


 「うぅぅぅ~、クララ、マール、本当に行ってしまうの」

 「クララ、マール、私の可愛い娘達、一刻も早く帰って来ておくれ」

 「「 「「 「お嬢様」 」」 」」


 「みんな、お父様とお母様を宜しくお願いします」

 「お任せてくださぁ~い、お嬢様」

 「ご心配には及びません。どうぞお任せ下さいませ」


 ぴょこん!とんとん。「有難うっす、クララ、行くっす。パパ、ママ、5年ぐらいしたら、こっそり帰って来るっす」

 とんとん。「行ってまいります」


  「「 「「 「行ってらっしゃいませ、お嬢様」 」」 」」

 「行っといで」「うぅぅぅ~、うう、クララ、マールぅ~」

 ぴょこ。「行くっすよぉ~」ぶるぶるぶる。ぱこぱこぱこ。ごろごろごろ。



 「私達は、夜中に人目を忍んで、ピュージンゲン商会の各地の支店を巡る旅に出たと」

 ぴょこん!「とても大変な旅だったっす」


 「まぁ~、そうだろうな、トイレはどうしたんだ。馬車には無いだろう」

 「聞かんでよかっ」「ほぉ~~~、そういう事ね」ばちん。「いったいなぁ~」


 ぴょこ。「一番大変だったのが、クララの好き嫌いっす」

 「あ~~~、確かに、今まさに母さんを見ていると分かる気がすよ」


 ぴょこん!「そう~なんすっ。野菜類、ほうれん草とかレバーとか、酸っぱい果物とか。好き嫌いばっかりするっすよ」

 「仕方なかっ、ほうれん草もレバーもかんとっ、レバニラも嫌いっ、酸っぱいのも嫌いっ」


 ぴょこ。「ちゃんと食べないと、月に一度、血が足らなくなるっす、吸血衝動しょうどうおさえられなくなるっすよっ」

 「わかっとるとっ、だから頑張って食べとるけん」


 「えっ、好き嫌いしなければ、血を吸わなくて良いのか」

 ぴょこん!「そうっすよ。」


 「じゃ何であのハロウィンの日、俺にみ付いたんだよ」

 「仕方なかっ、吸血鬼じゃけんっ」

 ぴょこ。「私が謝恩会しゃおんかいに行ってる間、好きな物ばっかり食べてたっすっ」


 「はぁ~、じゃぁ~何で月に一度なんだよ」「聞かんでよかとっ」

 ぴょこん!「女の子は月に一度、鬱々うつうつとして、噛み付きたくなるっす」

 「うーん、わからん」

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