第39話
了解!と勇ましくリーリスに返したものの、風で弾丸の軌道を変えられるって相当強くないかな、という気持ちで思わずため息がこぼれる。
「
「師匠、視認できない攻撃にどうやって剣を合わせればいいのか分かりません!」
「そこはほら、勘で」
そう言いながら、リーリスは背後から飛んできた風の弾丸を先程と同じように切り伏せる。得意げな顔をして僕を見るリーリスはそのまま僕の手を取って剣の姿に変わる。
(さて主様よ、何事も挑戦だからな!)
「それには同意するけど、もうちょっと安全にできる挑戦がよかったかなぁ!」
(はっはっは!)
リーリスの笑い声を尻目に、僕は隠れていた物陰から飛び出す。どうせ隠れていたって相手の攻撃はこちらに届く。それならばこちらの攻撃も届く範囲で応戦したい。防御は……リーリスに任せよう。
(主様は遠距離の攻撃手段に乏しいからな。確実を取るなら近距離戦だろう。その分向こうの攻撃も苛烈になるが、主様に任されたのならば役目は果たさんとな)
「ありがとう、よろしくね!」
飛び出したままに僕は男に向かって走り出す。剣を盾にするように構えるのがいいのかもしれないが、防御はリーリスに任せている。それを信じて僕は剣を前に出して走る。
*
アリシアと契約した男、リクは自分の弾を切り払った少女の姿を見つめてアリシアに問いかける。
「アリシア、あの少女があいつの契約している魔剣か?」
(リク、本当に戦うの? 私、姉さんと戦うのはちょっと……)
「姉、ということはお前よりも先に作られた魔剣か。ふん、相手にとって不足はない」
(あそこにいるのは『太陽の一』、お母様の加護を強く受け継いでいるリーリス姉さんだよ。司るのは錬金、お母様の専門分野に片足突っ込んでいるんだよ?)
「関係ないな。契約者が未熟ならその魔剣の性能を引き出せない。見たところ、あいつ自身の技量はそれほどでもないように見えるがな」
(……頑固者)
リクはそれに答えず、さらに引鉄を引く。しかしその銃撃も全て剣によって防がれる。魔剣の少女は物陰の少年と何事か話した後、手を繋いで剣へと変わる。
そのまま少年はこちらに向かって剣をこちらに向けて走り出す。それを見て、彼の口に笑みが浮かぶ。
「面白い、真正面から突っ込んでくる気概だけは評価してやるか」
(…………足元すくわれろ)
*
僕が走り出した途端、男が目にも止まらぬ速さで引鉄を引く。しかも一度ではなく何度も。思わず口から声が漏れそうになるが、必死に押しとどめて前へと進む。
「今だっ!」
風の弾丸が剣の間合いに入ったことを感覚で掴み、下から切り上げるようにして弾丸を斬り裂く。確かな手ごたえと共に目の前の一発が両断される。
「ぐ、ああっ!」
しかし他の弾丸によって胴体を打ち据えられる。リーリスの防御によって動けなくなるほどのダメージは受けていないが、やはり痛い。それでも僕は意地になって足を前へと進める。そうしなければ勝ちの目すら見えなくなってしまうからだ。
「はあっ!」
「ちいっ!」
何度かその後も銃撃を受けながら、僕は男に向かって剣を振り下ろす。男は銃をクロスさせるようにして剣を受け止めるが、だんだんと押されていく。
「おおおおっ!」
男が膝を突き、そのまま押し切ろうとした瞬間、僕の背中に重たいものがぶつかったような衝撃が走る。予想していなかった方向からの攻撃で力が抜けたところに、男の蹴りが腹に刺さる。
地面に転がった僕に、男はゆっくりと歩み寄る。男は僕に残念そうな目を向けたまま、口を開いた。
「っ、ぐはっ」
「ふん、魔剣が優秀でも使い手がこの様ならダメだな」
「くっ…………」
「お前は魔剣遣いに向いていない。世界のために、そいつを手放せ」
そして、そう言ったのだった。
僕と魔剣と、神様と 将月真琴 @makoto_hata_189
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