VS 暴走族
草薙・山寺両名の抵抗は無視され、府中署組織犯罪対策課による反社会的組織及び暴走行為集団の検挙作戦が開始された。
ジュラルミン製の盾で防護した警官が店内に突入。
ドラゴンスターとその構成員達が集めてきた暴走族が、決起集会をやっていたところだ。
呆気にとられる半グレや族。
しかし、乱入者が友達じゃない事が分かった瞬間、彼らは警官達に向かって行った。
ジュラルミン製の盾はまったく役に立たなかった。
数の利で押され、蹂躙される。
彼らはただ、若い女の声で通報を受け……面子や政治的策略、ほんの僅かな正義感でここに来た。
デマでもいい。悪戯でもいい。
余罪はある。ここでなんとしても引っぱるのだ。
滅茶苦茶? この事件が世に出るのは、警視庁のお偉方が雁首揃えて記者会見する時だ。
事件の始まりから終わりまで、都合よく出来たシナリオが新聞や雑誌の一面を飾る。……そのはずだった。
突入した警官の半数以上が倒れるまでは。
憎む警官が目の前で倒れた瞬間、暴走族は活気づきドラゴンスターの構成員達の顔には、諦めにも似た自暴自棄の感情が浮かんでいた。
リーダー、辻龍斗が声を張りあげ連中は外に飛び出す。
スレイヤーまで後一・二分。
都道256号を走っていると、前方方向に騒がしいバイクの集団が現れた。
それとほぼ同時に無線が入る。
『こちら警視九七! ドラゴンスターが進軍を始めました!』
「先頭集団を目視。アンタ等は府中署の連中を助けろ! 俺は立川の方に連絡を入れる」
『了解。幸運を』
周波数を変える。
「こちら一号車、聞こえるか?」
『二号車です。感度良好』
「今から、族の後ろに付く。絶対、攻撃が来るから戦闘に備えろ」
『了解!』
無線を切り、今度は携帯を出す。道路交通法違反だが、そんな事に構っていられない。
立川の本部強襲係に掛ける。
電話には矢上が出た。
『はい。日本ISS本部強襲係』
「矢上さんか。俺だ、赤沼だ」
『作戦はどうなりました?』
「失敗。馬に乗った蛮族がそっちに向かってる」
『……分かりました。駐屯地の方には私から。それと、周辺に部隊を展開します』
「頼んだ」
お互いに言いたい事はある。けれど、そんな事を言い合っている場合じゃないのだ。
俺はシグの撃鉄を起こし、ホルスターに仕舞う。
そして、携帯型メガホンを手にし窓を少し開けた。
車は既に暴走族の殿を捉えている。
「こちらは日本ISS強襲係だ! 前方を暴走中の集団に告ぐ! 今すぐ車両を止め武装を解除しろ! こちらは武器を持っている、使用許可も下りている! ……今すぐ止まれ! これは警告だ!」
俺が警告をした瞬間から、殿のバイクはは蛇行しながらスピードを落として詰めてきた。
「……警告はしたぜ」
俺はアクセルを少し踏み、バイクのカマを掘ってやる。
バイクの方も俺の接近に気が付き、スピードを上げたが遅かった。
法定速度を大幅に超えていたバイクは軽い衝撃でバランスを崩し、殿の男はアスファルトで顔面の整形手術する羽目になり。
バイクは見るも無残なスクラップと化し、縁石にぶつかった。
紛れもない宣戦布告に、族はあからさまに反応する。
何台かのバイクが俺達が乗るオデッセイを囲む。
「弓立、耳栓しとけ」
俺がそう言った途端、運転席側の窓ガラスが鉄パイプの打撃を受けひびが入った。
俺は窓を開いて、ガキに銃口を向ける。
ガキは驚愕の表情を浮かべ、咄嗟にブレーキを握ってしまう。
だが“車は急には止まれない”という言葉があるように、ブレーキを掛けたからと言ってその場でピタと止まるわけじゃない。
タイヤを滑らしてしまい、ガキは道路に投げ出される。
彼は後続のバイクに轢かれ、怪我を酷くさせていく。
囲んでいる奴等は、ドラゴンスターの応援に来た暴走族だろう。
現に、奴等が手にしているのは、道端に落ちてそうなパイプやら木刀だ。
俺は後部座席に座る局員に指示を出す。
「今から窓を全部開ける! 各自の判断で撃て!」
バイクの音がうるさく、指示を出すのにも声を張り上げなければならない。
「了解!」
二人の局員は揃って威勢のいい返事をした。
窓が開き、冷たい風が一気に車内に吹き込んでくる。
「この野郎!」
二ケツしたバイクがドアの横に着こうとしている。後ろに乗っているガキは、木刀を振り上げていた。
俺は彼らが乗るバイクの前輪に向かって、何度も撃った。
片手撃ちで、精度こと落ちるが数で押し切る。
五発ほど撃った時、バイクのタイヤが派手な音を立てて、バーストした。
つんのめったバイクは、オデッセイの側面に擦りながら転倒し、後ろのガキは道路に投げ出される。
断末魔は、騒がしいエンジン音にも負けないくらいの大声だった。
「ヘルメット着用は義務だぜ」
道路に真っ赤な花を咲かせたガキに向けて、来世の為の豆知識を教えてやる。
……聞こえている訳がないが。
局員や弓立も負けず劣らす、暴走族を倒している。
局員は、MP5による精密射撃。
サブマシンガンであるMP5も、作動方式のお陰で百メートル以内だったら狙撃銃にも負けない程の精密性がある。
俺の心配は、杞憂だったと思わせる奮闘ぶりを見せてくれている。
弓立は両手でS&Wを構え、暴走族に向かって発砲していた。
タイヤや族の腕を撃ち抜き、一台一台丁寧に潰していっている。
日本の警官は中々銃を撃たないと言うが、公安は違うのか。
そんな事を思いながら、まとわりつくバイクを倒していく。
車はいつの間にか立川市に入ってた。
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