何度目かの恋人
春風月葉
何度目かの恋人
彼女は彼女であって、君じゃないと頭ではわかっているはずなのに、また君を重ねている。どこか物憂げな様子も、瞳の奥に隠れた闇も、人形のような表情も、君の全てを彼女の裏に見ている。君はもういないのに、君の後ろ姿だけを追っている。
愛してるも、好きだよも、僕の言葉はいつだって君に向いている。彼女を通して、君に愛を伝える。それを聞いたときの彼女の嬉しそうな表情、それから逃げるように僕は、君を思い出す。彼女への罪悪感と君への執着が僕の中で喧嘩する。
彼女のためにも君を忘れたいのに、彼女の仕草が君を思い出させる。彼女の中に君を見つける度に、僕は深い溜め息をする。僕はまだ、彼女だけのために愛を囁けないでいる。
きっと君にかけられた迷惑な呪いのせいだ。だから僕は君以外に愛を傾けられない。
少しずつ、しかし確実に、彼女も君になっていく。彼女が彼女を失ったとき、僕は指輪を差し出してこう言うのだろう。
また会えたね、愛する君。
何度目かの恋人 春風月葉 @HarukazeTsukiha
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