もう一度
きっと柚葉は気づいた。
祭りが終わり、解散した。
言葉の仕様のない文字や感情がモヤモヤとした何かが頭の中でリピート再生するように回り続ける。
家に戻り、俺は眠れなく縁側を何度も往復させ、携帯を片手に春樹と百桃に"バレた"と一言だけ文を送信した。
これから柚葉とどう接したらいいのか、いつも通りに戻れるのか、俺一人の考えで行動する事が怖くなり、二人に頼るしか他に無いと判断し、今すぐにでも二人の助言を聞きたかった。
そしてしばらくの間、無数に広がる星と街を灯す満月に吸い込まれるようにして眺めていた。
「月、綺麗だな。こんな落ち着いて空見たのなんかいつぶりだったかな」
焦りと不安は完全には払拭されずとも、ただ空の景色に癒され、冷静さを少し取り戻すことが出来た。
「春樹と百桃は、もう寝ちゃったのか」
"既読"の付かない画面に視線を向け、深く考える事を放棄し、時の流れに身を任せようという結論となった。
日付が変わり、しばらくして欠伸を何度か繰り返した。
祭りで疲れたからか、それとも考え過ぎて頭が疲れたからか、さっきまで冴えていた身体の電源が切れたように布団に潜り込んだ。
「柚葉...柚葉...ゆず...は」
カーテンの隙間から差す朝日で目が覚めた俺は、ふと頬に違和感を感じ反射的に飛び上がる。
「冷たっ!!」
枕カバーに冷たい何かが染みとなって濡れていた。
夢で何を見たのか、汗にしては染みの広がり方が小さく、鼻水や唾液だとすれば高さが上にある為、恐らく涙なのだろうと予測する。
夢で泣くほどの内容だ、気になって頑張って思い出そうとすればするほど頭から薄れ消えていき、胸の奥が締め付けられるような感覚が微かに残し、次第に"それ"も消えていった。
家を出た俺は、いつも途中で乗ってくる春樹を俺は今か今かと、焦れったくなり全身がムズムズした。
春樹の最寄り駅に着き、ゆっくりと扉が開き春樹が入ってくる。
「和鷹くん、昨日はゴメンねメッセージくれてたみたいだけど...バレたって、どういう事?柚葉ちゃんと何があったんだ?」
春樹はもしかしたら"ノート"の事は知らないのかもしれない。
君とみた景色を今も鮮明に覚えている 緒夢來素 @totoki01
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