魯頌(ろしょう)

駉(引用2:馬コレクター魯僖公)

けい



駉駉牡馬けいけいぼば 在坰之野ざいけいしや

薄言駉者はくげんけいしゃ 有驈有皇ゆうじゅちゆうこう 有驪有黃ゆうりゆうおう

以車彭彭いしゃほうほう 思無疆しむきょう 思馬斯臧しばしぞう 

 肉付きのよい牡馬が

 郊外の野原にある。

 そのたくましい馬には、

 黒毛で内股が白のもの、

 黄金のように輝くもの、

 真っ黒なもの、

 ヒバリのような色のものがある。

 これらに車を引かせれば、

 なんと立派なことであろう。

 車に乗り、魯公は尽きせず

 民に思いを馳せる。

 これら馬のように、

 よき民であるように、と。


駉駉牡馬けいけいぼば 在坰之野ざいけいしや

薄言駉者はくげんけいしゃ 有騅有駓ゆうすいゆうひ 有騂有騏ゆうせいゆうき

以車伾伾いしゃひひ 思無期しむき 思馬斯才しばしさい

 肉付きのよい牡馬が

 郊外の野原にある。

 そのたくましい馬には、

 青と白とが混じった灰色のもの、

 黄色と白とが混じったもの、

 赤毛と黄毛とが混じったもの、

 青毛に黒毛の混じったものがある。

 これらに車を引かせれば、

 なんとたくましきことであろう。

 車に乗り、魯公はいつまでも

 民に思いを馳せる。

 これら馬のように、

 才覚あふれているように、と。


駉駉牡馬けいけいぼば 在坰之野ざいけいしや

薄言駉者はくげんけいしゃ 有驒有駱ゆうたんゆうらく 有騮有雒ゆうりゅうゆうらく

以車繹繹いしゃえきえき 思無斁しむえき 思馬斯作しばしさく

 肉付きのよい牡馬が

 郊外の野原にある。

 そのたくましい馬には、

 うろこ状の斑点のあるもの、

 白毛に黒いたてがみのもの、

 赤毛に黒いたてがみのもの、

 黒毛に白いたてがみのものがある。

 これらに車を引かせれば、

 いつまでも駆け巡れよう。

 車に乗り、魯公は飽くことなく

 民に思いを馳せる。

 これら馬のように、

 活力に満ちているように、と。


駉駉牡馬けいけいぼば 在坰之野ざいけいしや

薄言駉者はくげんけいしゃ 有駰有騢ゆういんゆうげ 有驔有魚ゆうてんゆうぎょ

以車祛祛いしゃきょきょ 思無邪しむじゃ 思馬斯徂しばしそ

 肉付きのよい牡馬が

 郊外の野原にある。

 そのたくましい馬には、

 灰色に白が混じるもの、

 赤と白のまだらのもの、

 足元が白くなっているもの、

 目の周りが白いものがある。

 これらに車を引かせれば、

 なんと頑健なことであろう。

 車に乗り、魯公は無心に

 民に思いを馳せる。

 これら馬のように、

 正しき道を進めるように、と。



 

○魯頌 駉

魯にいるお馬さん図鑑と化しておるな。詩序に於いては魯の僖公が馬を養うことで国力を増大させたことを顕彰したもの、とする。魯は僖公の代までにだいぶ凋落しておったので、それを立て直した功績がこうして讃えられておるわけである。




■思い邪なし


論語 為政2

子曰:「詩三百,一言以蔽之,曰思無邪。」


有名な句である。だいたいの解釈は「詩経を一言で言えば、読んでいて邪念が取り払われる」となっておる。……のであるが、正直こうして詩の全編を読んでみれば、「いやー一心不乱になって読んじゃうよね」以上の意味を求めると勇み足なのではないか、と言う気がする。




■郊外の馬を飼い慣らしたから


晋書51 束晳

昔騅駓在坰,史克所以頌魯僖。


束晳は西晋武帝期に隠然たる発言力を持っていた文人。小雅に追記した補亡詩をものした人物である。そんな彼が武帝より農業を今より盛んにするためにどうすればよいかを問われたときの返答、その一節で、当詩をピックアップしておる。「坰」にいる馬を、いわば野生の馬扱いとし、それらを飼い慣らしたから僖公は魯を再興できたのだ、とする。発言の全体像は上手く読み取りきれぬのだが、農務拡充にあたってはいかに人材を適切に配置するかが肝要、と語ったのであろう。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%BA%8C%E5%8D%81#%E3%80%8A%E9%A7%89%E3%80%8B

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る