豐年(引用20:豊作への感謝)

豐年ほうねん



豐年多黍多稌ほうねんたしょたと

亦有高廩えきゆうこうりん 萬億及秭ばんおくきゅうし

為酒為醴いしゅいれい 烝畀祖妣じょうひそひ

以洽百禮いこうひゃくれい 降福孔皆こうふくこうかい

 今年も豊作、イネもキビも豊か。

 高床の倉庫に、ぎっしりと。

 その豊かな収穫で酒や甘酒を造る。

 先祖の霊に捧げるだけの供物が

 十分に取りそろえられた。

 ならば大いなる福がもたらされよう。




○周頌 豐年

豊作であれば十分に供え物ができ、福がもたらされる……ともなれば不作の年は供え物ができずにどんどん状況が悪化することにはならぬのであろうか。どうもこの辺りの祭祀の考えはもろもろガバい感じがあって嫌いになれぬ。と言うよりも「物言わぬ天の望む形」がどうして執り行われている祭祀と合致していると信じられてしまうのか。まぁ、あまりツッコミを入れると不毛極まりない気もするのでやめておこう。




■豊作の年

やや一般語句的ではあるのだが、この当時「豊作」という言葉は存在しておらぬ。これは和製漢語なのかな。ざっと調べてみても、語源は上手く見いだせぬ。ともあれ史書では「豊作の年」として用いられておるのが伺える。


・春秋 昭公1

 雖有饑饉。必有豐年。


・漢書6 武帝

 今京師雖未為豐年,山林池澤之饒與民共之。

 民或飢寒,故巡祭后土以祈豐年。

・漢書22 楽上

 天布施后土成,穰穰豐年四時榮。

・漢書25.2 郊祀

 朕飭躬齊戒,親奉祀,為百姓蒙嘉氣,獲豐年焉。

 以四時祠江海雒水,祈為天下豐年焉。

 朕巡祭后土,祈為百姓蒙 豐年 ,今穀嗛未報,鼎焉為出哉?


・三國志13 鍾繇 子 鐘毓

 水旱不時,帑藏空虛,凡此之類,可須豐年。

・三國志13 王朗

 使足用列遠人之朝貢者,脩城池,使足用絕踰越,成國險,其餘一切,且須豐年。


・晋書31 左貴嬪

 曣晛沾濡,柔潤中畿。長享豐年,福祿永綏。

・晋書38 司馬攸

 時有水旱,國內百姓則加振貸,須豐年乃責,十減其二,國內賴之。

・晋書51 束皙

 必多此類,最是不待天時而豐年可獲者也。

・晋書52 郤詵

 百姓殆業而咎時,非所以定人志,致豐年也。


・宋書22 楽四

 騏驎躡足舞,鳳凰拊翼歌。豐年大置酒,玉尊列廣庭。


・魏書9 元詡

 庶嘉澤近降,豐年可必。

・魏書60 程駿

 矧乃盛明,德隆道玄。豈唯兩施,神徵豐年。豐年盛矣,化無不濃。有禮有樂,政莫不通。

・魏書110 食貨

 京都度支歲用之餘,各立官司,豐年糴貯於倉,時儉則加私之一,糶之於民。




■数多なる礼の基礎

儒は「仁」の徳の実現を目指すのであるが、その際に特に重んじられるのが「孝」、すなわち自らのルーツに対する敬愛の情の発露である。形式として重んじられるのは「礼」であるが、それは徳を示す形でしかない。ただし「だからこそ」礼は重視されねばならぬ。読書百遍意自ずから通ずとも言う、人間はまず形式を覚えることで、初めて形式が持つ意味合いに踏み込めるからである。つまりいかに仁徳を修めようとして礼を学んでみたところで、親を愛すべく振る舞えぬのであれば「徳」は身につかぬ、とするのが儒の基本精神である。地獄かな?


左伝 襄公2-4

 季孫於是為不哲矣.且姜氏.君之妣也.詩曰.為酒為醴.烝畀祖妣.以洽百禮.降福孔偕.

・晋書22 楽上

・宋書20 楽二

 既朝乃宴,以洽百禮。頒以位敘,或庭或陛。




毛詩正義

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