有瞽(引用4:美しき音楽)

有瞽ゆうこ



有瞽有瞽ゆうこゆうこ 在周之庭ざいしゅうしてい

設業設虡せつぎょうせつきょ 崇牙樹羽すうがじゅう

應田縣鼓ようでんけんこ 鞉磬柷圉とうけいしゅくぎょ

 楽士が居並び、

 周の霊廟の前で大いに演奏する。

 横に渡された板に楽器が掛けられ、

 上には美しき鳥の羽が飾られる。

 小さな鼓、大太鼓、

 その他打楽器の多くが鳴り響く。


既備乃奏きびしそう 簫管備舉しょうかんびきょ 喤喤厥聲こうこうくつせい

肅雝和鳴しゅくようわめい 先祖是聽せんそぜてい

我客戾止がきゃくれいし 永觀厥成えいかんくつせい

 音楽が鳴り響き、

 笛の音がそこに混じり入る。

 なんとも調和された音楽、

 先祖の霊たちは、

 また夏や殷の霊をも招き、

 周の永らくの繁栄を

 見守られるのである。




○周頌 有瞽

音楽について音楽が語る、と言うのもまたメタ的な感じがあるな。まぁ、歌が登場するのは楽器が盛大に鳴り響いてからであろう。ともなれば「歌詞の登場」がある意味で「祖霊たちの登場」的に認識できるのやも知れぬ。この辺りの古楽の展開は、再現とかされているのかな。調べてみたいものである。




■音楽が、先祖を喜ばせる

ここでは特に史記の記述を語っておこう。魏文侯が孔子の高弟である卜商、いわゆる子夏と「よろしくない音楽」について語った一節である。鄭・宋・衞・齊の四国で流行る音楽は、流行ってるけどクソなので君子が掛けるべき音楽ではない、祭祀で掛けるなどもってのほかである、とする。「素晴らしい音楽は先祖が喜ぶ」という、なんというか、こう……そうね、としか言いようがないな。


・史記24 樂書

 鄭音好濫淫志,宋音燕女溺志,衞音趣數煩志,齊音驁辟驕志,四者皆淫於色而害於德,是以祭祀不用也。詩曰:『肅雍和鳴,先祖是聽。』夫肅肅,敬也;雍雍,和也。夫敬以和,何事不行?

・後漢書 礼儀中 注

 宗廟樂,虞書所謂『琴瑟以詠,祖考來假』,詩云『肅雍和鳴,先祖是聽』。

・晋書22 楽二

 其有宗廟之樂者,則所謂「肅雍和鳴,先祖是聽」者也。




■楽器解説


宋書19 楽一

長六尺六寸者曰晉鼓,金奏則鼓之。應鼓在大鼓側,詩云「應朄懸鼓 」是也。


宋書楽志にて、楽器に八つの分類がある、と書かれる。金、石、土、革、絲、木、匏、竹である、と言う。そのうちの革、つまり太鼓の解説の一節である。大きいものを鼓、小さいものを朄(=田)もしくは應と呼び、それらが居並ぶ様が当詩にて歌われる、とされるのである。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%B9%9D#%E3%80%8A%E6%9C%89%E7%9E%BD%E3%80%8B

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