時邁(引用12:武王天下を統べ、安んず)

時邁じまい



時邁其邦じまいきほう

昊天其子之こうてんきしし 實右序有周じつうじょゆうしゅう

薄言震之はくげんしんし 莫不震疊ばくふしんじょう

 天下の主となった武王が、

 各地を巡幸する。

 広大なる天は、彼を天子とされた。

 そうして周を、殷を継ぐ

 天下の主と定められた。

 武王が軍を動かせば、

 天下に震えずにある者もない。


懷柔百神かいじゅうひゃくしん 及河喬嶽きゅうかきょうがく

允王維后いんおういこう

 かつ、武王は天地山河の神霊らをも

 よく祀られ、よく慰撫された。

 まこと、王は天の子、天下の主。


明昭有周めいしょうゆうしゅう 式序在位しきじょざいい

載戢干戈さいしゅうかんか 載櫜弓矢さいこうきゅうし

我求懿德がきゅういとく 肆于時夏しうじか

允王保之いんおうほし

 清明なる、周の国の政。

 君公の序列を明らかとして秩序を与え、

 天下が治まれば

 矛や弓矢の類は仕舞われた。

 王は仰る、徳行豊かな者を求め、

 この中華に徳を布きたいのだ、と。

 まこと、王のご尽力により、

 天下は保たれた。




○周頌 時邁

武王の偉業を讃える歌であるな。「武」とはあくまで変事に、やむを得ず用いられるべきものであるという思考がここにも見える。よくもまぁ斯様に空々しいお題目を唱えたものだという気しかせぬが、そこはそれ。




■時に邁進す

「時邁」句については、上記のような意味合いが載る程度であろう。ただ詩題ともなっておるので、やや雅語的に扱われる、となろうか。ここでもやはり楽志での援用が多い辺り、通常語ではないことが伺える。


・後漢書84 董祀妻

 歲聿暮兮時邁征,夜悠長兮禁門扄。

・晋書22 楽上

・宋書20 楽二

 神祇來格,福祿是臻。 時邁其猶,昊天子之。

・晋書22 楽上

 皇矣有晉,時邁其德。受終于天,光濟萬國。

・晋書23 楽下

・宋書22 楽四

 惟武進,審大計。時邁其德,清一世。

・宋書20 楽二

 皇矣有晉,時邁其德。受終于天,光濟萬國。

・宋書20 楽二

 豫順以動,大哉惟時。時邁其人,世載邕熙。





■武は変事のみ

儒の価値観として文尊武卑があるわけであるが、それを端的に示す言葉である、とも言えよう。変事以外の時に武具はしまっておくべき、とするのである。この当時の情勢としてそんな都合よくゆくわけなかろうに、とはどうしても思わぬでもないのだがな。


・左伝 宣公12-6

 止戈為武.武王克商.作頌曰.載戢干戈.載櫜弓矢.我求懿德.肆于時夏.允王保之.

・漢書27.1 五行上

・晋書27 五行上

 其於王事,出軍行師,把旄杖鉞,誓士衆,抗威武,所以征畔逆止暴亂也。詩云:「有虔秉鉞,如火烈烈。」又曰:「載戢干戈,載櫜弓矢。」



毛詩正義

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