鳧鷖(引用3:祖霊、霊廟にて安らぐ)

鳧鷖ふえい



鳧鷖在涇ふえいざいきょう 公尸來燕來寧こうしらいえんらいねい

爾酒既清じしゅきせい 爾殽既馨じこうきけい

公尸燕飲こうしえんいん 福祿來成ふくろくらいせい

 カモとカモメとが川べりにある。

 祖霊が霊廟にて安らがれるかのよう。

 王が供えた神酒は清く、

 ふくよかな香りをもまとっている。

 祖霊が酒を楽しまれれば、

 王のもとに福がもたらされよう。


鳧鷖在沙ふえいざいさ 公尸來燕來宜こうしらいえんらいぎ

爾酒既多じしゅきた 爾殽既嘉じこうきか

公尸燕飲こうしえんいん 福祿來為ふくろくらいい

 カモやカモメが砂浜で遊ぶ。

 祖霊は霊廟にて安らがれ、

 よろしいこととお喜びである。

 王が供えた神酒は多く、

 併せて肴にもめでたいものが揃う。

  祖霊が酒を楽しまれれば、

 王のもとに福がもたらされよう。


鳧鷖在渚ふえいざいしょ 公尸來燕來處こうしらいえんらいしょ

爾酒既湑じしゅきしょ 爾殽伊脯じこういほ

公尸燕飲こうしえんいん 福祿來下ふくろくらいか

 カモやカモメが渚で遊ぶ。

 祖霊は霊廟にて安らがれ、

 そこを我が在るべき所と定められた。

 王が供えた神酒はよく濾されており、

 肴には干し肉が供えられている。

 祖霊が酒を楽しまれれば、

 王のもとに福がもたらされよう。


鳧鷖在潀ふえいざいそう 公尸來燕來宗こうしらいえんらいそう

既燕于宗きえんうそう 福祿攸降ふくろくゆうこう

公尸燕飲こうしえんいん 福祿來崇ふくろくらいすう

 カモやカモメが水たまりで遊ぶ。

 祖霊は霊廟にて王によく尊ばれる。

 王によく尊ばれた祖霊は喜び、

 お国に幸福をもたらされる。

 祖霊が酒を楽しまれれば、

 王のもとに福がもたらされよう。


鳧鷖在亹ふえいざいび 公尸來止熏熏こうしらいしくんくん

旨酒欣欣ししゅきんきん 燔炙芬芬はんしゃふんふん

公尸燕飲こうしえんいん 無有後艱むゆうごかん

 カモやカモメが水門近くで遊ぶ。

 祖霊は霊廟にてほろ酔いで喜ばれる。

 良き酒に喜び、

 炙り肉の香りを楽しまれる。

 祖霊が酒を楽しまれれば、

 後の世に艱難などもたらされるまい。




○大雅 鳧鷖


久々に「歌っぽい」詩を見た気がするな。かなりきっちり字句と韻が揃えられておる。しかし形式のぴっちりぶりとは裏腹に、ずいぶんとやわらかな印象をも抱く。それにしても前詩といい当詩といい、後々の展開を踏まえれば完全にフラグ詩にしか見えぬのがな。国風や小雅で散々にこの手の詩を「しかるに現代はぐちゃぐちゃなのでクソ!」と言っておきながら、「大雅のはじめのほうにあるから」という理由だけで正雅として解釈するのはいくら何でも太平楽に過ぎぬか。




■カモやカモメ

「様々な鳥」の雅語的運用時に用いられている。あとはちらほら水門を「亹」とミヤビヤカに表現するときに、毎回解説で注が付される感じであろうか。ええい、注がなければ読めぬ表現などやめてしまえ。


・漢書28 地理 注

 亹者,水流峽山,岸深若門也。詩大雅曰『鳧鷖在亹』,亦其義也。

・漢書87.1 揚雄

 鳧鷖振鷺,上下砰磕,聲若雷霆。

・後漢書30.1 班固上

 鶬鴰鴇鶂,鳧鷖鴻鴈,朝發河海,夕宿江漢,沈浮往來,雲集霧散。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%B8%83#%E3%80%8A%E9%B3%A7%E3%80%8B

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