采綠(遠出した夫を待つ)

采綠さいりょく



終朝采綠しゅうちょうさいりょく 不盈一匊ふえいいちきく

予髮曲局よはつきょくきょく 薄言歸沐はくげんきぼく

 夜明けから朝餉どきまで、

 黄色の染料にするカリヤスを

 採ろうとするも、まともに集まらぬ。

 気付けば我が髪も傾いでいた。

 これは一度帰って、沐浴しよう。


終朝采藍しゅうちょうさいらん 不盈一襜ふえいいちせん

五日為期ごにちいき 六日不詹ろくにちふせん

 夜明けから朝餉どきまで、

 青の染料に使うアイを摘もうとするも、

 気もそぞろで、前垂れ分も集まらぬ。

 あの人は五日で帰ってくる、

 そう約束したのに、六日になっても

 いまだ帰ってこられない。


之子于狩ししうしゅ 言韔其弓げんちょうききゅう

之子于釣ししうちょう 言綸之繩げんりんししょう

 あの方が狩りに出るなら、

 その弓を袋に詰めておこう。

 あの方が釣りに出られるならば、

 その釣り糸をより合わせよう。


其釣維何きちょういか 維魴及鱮いほうきゅうちょ

維魴及鱮いほうきゅうしょ 薄言觀者はくげんかんしゃ

 釣ってこられる魚はなんだろう。

 ホウやショであろうか。

 ああ、ホウやショが釣れるさまを、

 隣で見ていたいものだのに。




○小雅 采綠


これはあえて詩序に従い、「公役に出た夫が帰ってこない」ことを怨む詩としてみると、無駄にドラマでよいやもしれぬな。細君氏には申し訳ない限りであるが。いつまで経っても帰って来ぬ夫が帰ってきたときに、何がしたいか。そのことに思いを馳せるのである。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%BA%94#%E3%80%8A%E9%87%87%E7%B6%A0%E3%80%8B

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