頍弁(滅亡の前の宴)

頍弁きべん



有頍者弁ゆうきしゃべん 實維伊何じついいか

爾酒既旨じしゅきし 爾殽既嘉じこくきか

豈伊異人がいいいじん 兄弟匪他けいていひた

蔦與女蘿ちょうよにょら 施于松柏しうしょうはく

未見君子みけんくんし 憂心弈弈ゆうしんえきえき

既見君子きけんくんし 庶幾說懌しょきえったく

 高くそそり立つ冠は誰のためか?

 宴に用意された酒も、食べ物も美味。

 集まる者は他人ではなく、兄弟のよう。

 ヤドリギやマツノミドリと言ったツタが

 マツやカシワに頼るがごとく、

 彼らもまた王を頼りとする。

 天子が見えぬうちにはそわそわとするが、

 天子が現れれば共に相親しまん事を望む。


有頍者弁ゆうきしゃべん 實維何期じついかき

爾酒既旨じしゅきし 爾殽既時じこくきじ

豈伊異人がいいいじん 兄弟具來けいていぐらい

蔦與女蘿ちょうよじょら 施于松上しうしょうじょう

未見君子みけんくんし 憂心怲怲ゆうしんへいへい

既見君子きけんくんし 庶幾有臧しょきゆうぞう

 高くそそり立つ冠は誰のためか?

 宴に用意された酒も、食べ物も季節の味。

 集まる者は他人ではなく、兄弟のよう。

 ヤドリギやマツノミドリと言ったツタが

 マツの木に這いのぼるがごとく、

 彼らもまた王を頼りとする。

 天子が見えぬうちにはそわそわとするが、

 天子が現れれば共に相親しまん事を望む。


有頍者弁ゆうきしゃべん 實維在首じついざいしゅ

爾酒既旨じしゅきし 爾殽既阜じこくきふ

豈伊異人がいいいじん 兄弟甥舅けいていせいしょう

如彼雨雪じょかうせつ 先集維霰せんしゅういさん

死喪無日しそうむじつ 無幾相見むきそうけん

樂酒今夕がくしゅこんせき 君子維宴くんしいえん

 高くそそり立つ冠は王の頭の上。

 宴に用意された酒も、食べ物も沢山。

 集まる者は他人ではなく、一族のよう。

 雪が降る前にまずあられが降る。

 ひと死にのない日などなく、

 いつまでも会えるというわけでもない。

 いまのこの酒宴を満喫しよう、

 せっかく天子が宴を

 設けてくださったのだから。




○小雅 頍弁


和やかな雰囲気を感じられもせぬではないが、最終連に及んで突然「大雪の前のみぞれ」などと言う大寒の予感を漂わせる。そうして詩全体を見返すと「この王が被る冠は、本当にこの王の頭の上にあってよいのか?」という疑問の投げかけであるようにも見えてくる。そして最終連が「間もなく滅ぶのだし、騒いでしまえ」という内容にも見えてこよう。こう言う詩ならば詩序の「幽王を批判する」に対し、素直にうなずけるのだがな。ただ別の疑問が湧きおこるのだ。孔子この詩で邪さが洗い流されるの……?




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E5%9B%9B#%E3%80%8A%E9%A0%8D%E5%BC%81%E3%80%8B

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