信南山(見事な祭祀)

信南山しんなんざん



信彼南山しんかなんざん 維禹甸之いうてんし

畇畇原隰いんいんげんしゅう 曾孫田之そうそんでんし

我疆我理がきょうがり 南東其畝なんとうきほ

 素晴らしきかな、終南山。

 そこは禹王がお治めになった山。

 広々とした原野を開墾され、

 子孫のための田畑とされた。

 区画を定め、人々に分配し、

 南北東西にわたり、畝を設けられた。


上天同雲じょうてんどううん 雨雪雰雰うせつふんぷん

益之以霢霂えきしじばくぼく 既優既渥きゆうきあく

既霑既足きてんきそく 生我百穀せいがひゃくこく

 空に雲が集い、雪をひらひら降らせる。

 それは豊作のしるし。

 春の小雨が大地を良く潤し、

 そのみずみずしき潤いが、

 植えられた穀物を大いにはぐくむ。


疆場翼翼きょうじょうよくよく 黍稷彧彧しょしょくいくいく

曾孫之穡そうそんししょう 以為酒食じいしゅしょく

畀我尸賓ひがしひん 壽考萬年じゅこうばんねん

 田畑の境界は見事に定められ、

 境界線争いが起こることもなく、

 おかげでキビたちはすくすくと育つ。

 禹王の子孫たる王は収穫より

 酒を造り、食事を振るまう。

 先祖の霊たちに捧げよう、

 どうか彼らに、万年の繁栄を。


中田有廬ちゅうでんゆうろ 疆場有瓜きょうじょうゆうか

是剝是菹ぜはくぜしょ 獻之皇祖けんしこうそ

曾孫壽考そうそんじゅこう 受天之祜じゅてんしこ

 田と田の間に結ばれた草小屋、

 あぜに植えられるのは瓜。

 瓜をもぎ取り、浸し物とし、

 先祖の霊に捧げるのである。

 子孫世反映されかし、

 天よりの恵みを受けられるよう。


祭以清酒さいじせいしゅ 從以騂牡じゅうじせいぼ

享于祖考きょううそこう 執其鸞刀しつきらんとう

以啟其毛じけいきもう 取其血膋しゅきけつりょう

 よく濾された清酒を捧げ、

 いけにえの赤毛の牛を捧げる。

 捧げる先は、先祖の霊。

 鈴の連なったナイフを取り、

 捧げる牛の毛並みが

 一色であることを告げ、

 その血や内臓につく脂を捧げる。


是烝是享せじょうせきょう 苾苾芬芬ひつひつふんぷん

祀事孔明しじこうめい 先祖是皇せんぞぜこう

報以介福ほうじかいふく 萬壽無疆ばんじゅむきょう

 神に捧げ、奉る供物の用意は万全。

 祭の式辞は実に明らかである。

 先祖の霊もやってこられよう。

 先祖の霊よ、大いなる福で答えられよ。

 どうか彼らに、万年の繁栄を。




○小雅 信南山


楚茨と同じく、盛大な先祖のための祭祀を描き出す詩であり、ここでもやはり詩序は「そういう立派な祭祀が幽王の世ではなされないからクソ」と語る。絶好調であるな。また詩句が被っていることから、当詩と楚茨は同一の作者の手によるものなのではないか、と語る向きもあるようである。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81%E4%B8%89#%E3%80%8A%E4%BF%A1%E5%8D%97%E5%B1%B1%E3%80%8B

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