采芑(引用2:蛮族討伐の詩)
チサの葉を摘もう、
あの新田で、あの休耕田で。
方叔将軍が率いる戦車は三千台。
どの戦車にも戦道具が載る。
方叔将軍の載る馬車を引く、
四頭の馬も足並みそろえる。
馬車は赤く輝き、
アジロの覆い、魚の皮の矢筒、
馬具もきらめいている。
チサの葉を摘もう、
あの新田で、村落のほとりで。
方叔将軍が率いる戦車は三千台。
風に吹き付ける風に、旗がたなびく。
方叔将軍の載る馬車につく、
馬をつなぐ横木も整い、
各馬に二つずつつく鈴が鳴る。
方叔が纏うは天子より下賜された衣。
朱の膝掛もまた、あでやか。
その隣には、青き宝玉が輝く。
鋭く飛ぶハヤブサも、
最終的には巣に戻る。
方叔将軍が率いる三千の戦車もまた、
節度ある行軍をなす。
ドラが打ち鳴らされ、
軍は整列し、また止まる。
賢明なるかな、方叔将軍。
打たれるドラが深く響けば、
そのたびに軍は鍛えられ、
研ぎ澄まされる。
蠢きまわる荊州の蛮族を、
偉大なる周の国は憎んでいる。
方叔は国の元老であるが、
そのはかりごとは盛んである。
方叔の率いる軍は
汚らしき蛮族を捕らえる。
戦車は勢い盛んに敵に迫る、
その轟音は雷霆のごとし。
賢明なるかな、方叔将軍。
さきに北の蛮族を打ち払い、
今は南の荊州蛮を恐れさせた。
○小雅 采芑
チサの葉を摘んでいるはずが方叔将軍が荊州蛮を平定されていた。どうしてこうなった。それにしても「蛮族は醜悪」と語るわ、「大邦はぶっ殺す気満々」だわと、ナチュラルボーンウエメセなのがたまらぬな。我々が偉大なので逆らうお前たちはクソとか、実に後世の歴史書でもよく見る論法である。
■東晋は蛮族
晋書112 苻生
故詩曰,『蠢爾蠻荊,大邦為仇。』言其不可以德義懷也。
前秦二代目皇帝苻生は、その治世にて前涼との同盟を組もうと使者を派遣する。しかしくらうのは塩対応。それでも何とか同盟しようと食い下がっていた時のやり取りである。主張としては前秦が一番すごい、東晋はそのすごい前秦にあくまで逆らい続けるからクソ、まさに「蠢く蠻荊が我らの仇となる」の詩通りやんけ。けど前涼さん、あんたは違うんで仲良くしたいんよ、と言う内容である。前涼は散々迷ったのだが、最終的には同盟を結ぶことにした。一応その後も書いておくと、前涼は前秦に攻め滅ぼされることとなる。
■おい蛮族●すゾ☆
世説新語 排調41
習鑿齒孫興公未相識。同在桓公坐。桓語孫:「可與習參軍共語。」孫云:「蠢爾蠻荊敢與大邦為讐。」習云:「薄伐獫狁至于太原。」
東晋時代、桓温の宴席にて、ふたりの文人、荊州人の習鑿齒と太原人の孫綽とが出会った。すると桓温、この二人にラップバトルを強要。先手の孫綽が当詩を引き「おい蠢く荊州のクソ、お国にかみつくんじゃねーぞ」と語れば、後手の習鑿齒は“ひとつ前の”小雅六月を引用し「うるせー太原のクソが●すぞ」と返す。いや習鑿齒のチョイスが天才過ぎはせぬか。順番マウントを取りに来ているではないか。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%8D%81#%E3%80%8A%E9%87%87%E8%8A%91%E3%80%8B
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