曹風(そうふう)

蜉蝣(引用1:軽佻浮薄批判)

蜉蝣ふゆう


蜉蝣之羽ふゆうしし 衣裳楚楚いしょうそそ

心之憂矣しんしゆういー 於我歸處おがきしょ

 カゲロウの羽のような、軽やかな着物。

 なんと華美な服装だろう、

 私の心は鬱々とする。

 私のように、質素であってほしいのに。


蜉蝣之翼ふゆうしよく 采采衣服さいさいいふく

心之憂矣しんしゆういー 於我歸息おがきそく

 カゲロウの羽のような、

 きらびやかな着物。

 なんと浮ついた心持ちだろう、

 私の心は鬱々とする。

 私のように、ゆったりと

 していてほしいのに。


蜉蝣掘閱ふゆうくつえつ 麻衣如雪まいじょせつ

心之憂矣しんしゆういー 於我歸說おがきせつ

 カゲロウが地面から出てきたような、

 その真っ白な着物。

 私の心は鬱々とする。

 私のように、落ち着いてほしいのに。




○国風 曹風 蜉蝣


軽佻浮薄を戒める、としか言いようのない内容であるな。「於我歸」については、「私のところに戻ってきて」と解釈するのが一般的なようである。そうすると子の浮ついた日々を心配する親の気持ちを歌った、ともとれるようになろうか。




○儒家センセー のたまわく


曹の国は斉よりやや内陸に入った黄河沿岸の国! もとは殷の湯王がその弟を封じた地である! 質素倹約を旨とした平和で美しい国であったが、代が下るにつれ、徐々に奢侈に溺れる者も多くなってきた! 特にその傾向が顕著となったのが、昭公の折! 故に当詩では、昭公の奢侈の風を批判しているのである!




■清廉に過ぎるのもよくないよね


三國志23 和洽裴注

魏承漢亂,風俗侈泰,誠宜仰思古制,訓以約簡,使奢不陵肆,儉足中禮,進無蜉蝣之刺,退免采莫之譏。


袁紹、劉表の下を経て曹操の下についた和洽は、当時の政治の方向性が清廉さ、倹約重視だったのをやや行き過ぎなのではないか、と批判。曹操に進言した。その進言に対し、東晋の孫盛がコメントを加えている。この頃は漢の中でも魏国の存在感が大きくなっていた。漢帝のもとで緩んだ風紀も引き締められたが、やはり行き過ぎはよくない、放っておけば当詩のような批判を受けることにもなろうが、やり過ぎると今度は「采莫の謗り」が加えられるよ、とのことである。後者についてはぺんぺん草も生えぬ、といったあたりになるのかな。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%83#%E3%80%8A%E8%9C%89%E8%9D%A3%E3%80%8B

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る