晨風(出征した夫を待つ/無益な出征)

晨風しんぷう


鴥彼晨風いつかしんぷう 鬱彼北林うつかほくりん

未見君子みけんくんし 憂心欽欽ゆうしんきんきん

如何如何にょかにょか 忘我實多ぼうがじつた

 激しい朝風が吹く。

 鬱蒼とした北の林が揺れる。

 あのお方は未だ戻ってこない。

 心配が募るばかり。

 どうして、どうして。

 私をお忘れになってしまったのか。


山有苞櫟さんゆうほうれき 隰有六駮しつゆうろくはく

未見君子みけんくんし 憂心靡樂ゆうしんびがく

如何如何にょかにょか 忘我實多ぼうがじつた

 山にはクヌギの木があり、

 沢辺にはマユミの木がある。

 あのお方は未だ戻ってこない。

 心配でなにも楽しめぬ。

 どうして、どうして。

 私をお忘れになってしまったのか。


山有苞棣さんゆうほうてい 隰有樹檖しつゆうじゅすい

未見君子みけんくんし 憂心如醉ゆうしんにょすい

如何如何にょかにょか 忘我實多ぼうがじつた

 山には庭梅があり、

 沢にはヤマナシの木がある。

 あのお方は未だ戻ってこない。

 心配で目が回る。

 どうして、どうして。

 私をお忘れになってしまったのか。




○国風 秦風 晨風


爽やかなはずの朝の風は、ただ寒々と彼女の肌を打つ。出征した夫が帰ってこようという兆しは一向に見えぬ。「私を忘れてしまったのか」とはまた婉曲な表現であるな。出征に出たとしたら、戦死してしまっている恐れもあろうに。無論、それこそが認めたくないことでもあろうが。




○儒家センセー のたまわく


晨風とは、ハヤブサのことである! 鬱蒼とした林に集うハヤブサ! それは何とすれば、秦の康公が穆公の業を受け継ぎ切れず、国に混乱をもたらしたことを示すのである!




■皇帝の徳とは


晋書5 評

百姓皆知上德之生己,而不謂浚己以生也,是以感而應之,悅而歸之,如晨風之鬱北林,龍魚之趣藪澤也。


人々は大いなる徳が人々を生み出し、また損ねることがないことを知れば、喜んで大いなる徳のもとに導かれよう、そう、ハヤブサが鬱蒼とした北林に集まるように、龍魚が池に赴くように(こちらの出典は荀子)、と語る。つまり晋を滅ぼした懐帝や愍帝にそこまでの徳はなかった、と言いたいのである。いやアンタ未成年のガキ捕まえて徳もクソも……。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%85%AD#%E3%80%8A%E6%99%A8%E9%A2%A8%E3%80%8B

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