綢繆(引用22:冬場の出会い/婚姻時期の乱れ)

綢繆ちゅうぼう



綢繆束薪ちゅうぼうそくしん 三星在天さんせいざいてん

今夕何夕こんゆうかゆう 見此良人けんしりょうじん

子兮子兮しけいしけい 如此良人何じょしりょうじんか

 薪を束ね、糸で巻く。

 三ツ星が夜空に瞬く。

 あぁ、今宵は何としたことか。

 こんな良い方にお会いできた。

 あなた、あなたよ。

 かのお方、どう遇しようか。


綢繆束芻ちゅうぼうそくすい 三星在隅さんせいざいぐう

今夕何夕こんゆうかゆう 見此邂逅けんしかいこう

子兮子兮しけいしけい 如此邂逅何じょしかいこうか

 薪を束ね、糸で巻く。

 三ツ星が東南の空に瞬く。

 あぁ、今宵は何としたことか。

 こんな素晴らしい出会いがあった。

 あなた、あなたよ。

 この出会い、どう解釈しよう。


綢繆束楚ちゅうぼうそくそ 三星在戶さんせいざいこ

今夕何夕こんゆうかゆう 見此粲者けんしさんしゃ

子兮子兮しけいしけい 如此粲者何じょしさんしゃか

 薪を束ね、糸で巻く。

 三ツ星が西の空に瞬く。

 あぁ、今宵は何としたことか。

 こんな輝かしき方にまみえるとは。

 あなた、あなたよ。

 かのお方、どう歓待できよう。




○国風 唐風 綢繆


三ツ星が輝く夜、薪をより合わせる。すなわち真冬であろうか。そのような中素晴らしい方をもてなさんとする。その偶然の出会いに感謝する。出逢いの素晴らしさを歌ったように見えるのだが、さて。




○儒家センセー のたまわく


晋の国が乱れ、男女の縁がうまく結ばれなかったことを批判しているのである! 婚姻に適した時期は旧暦で言う一月や二月! ここで語られている季節は十月ころ! 国の乱れが適切な時期の婚姻をも許さぬとは、なんともやり切れぬことではないか!




■まとわりつく。


・三國志32 劉備

 權稍畏之,進妹固好。先主至京見權,綢繆恩紀。

・三國志62 胡綜

 臣昔為曹氏所見交接,外托群臣,內如骨肉,恩義綢繆……

・晋書31 左貴嬪

 綢繆庶正,密勿夙夜。

・晋書33 鄭沖

 仍荷保傅之重,綢繆論道之任……

・晋書62 祖逖

 與司空劉琨俱爲司州主簿,情好綢繆,共被同寢。

・晋書67 溫嶠

 且自頃之顧,綢繆往來,情深義重……

・晋書75 王坦之

 且受遇先帝,綢繆繾綣,並志竭忠貞,盡心盡力,歸誠陛下,以報先帝。

・晋書76 史臣評 賛

 廙稱多藝,綢繆哲後。

・晋書92 袁宏「三國名臣頌」

 先生標之,振起清風。綢繆哲後,無妄惟時。

・晋書98 王敦

 既往之勳,疇昔之顧,情好綢繆,足以曆薄俗,明君臣,合德義,同古賢。

・宋書5  文帝紀

 詔曰:「丹徒桑梓綢繆,大業攸始,踐境永懷,觸感罔極。

・宋書29 苻瑞下

 今我大宋,靈貺綢繆。

・宋書42 王弘

 並綢繆先眷,契闊屯夷,內亮王道,外流徽譽。

・宋書44 謝晦

 總錄百揆,翼亮三世,年耆乞退,屢抗表疏,優旨綢繆,未垂順許。

・宋書69 劉湛

 湛初入朝,委任甚重,日夕引接,恩禮綢繆。

・宋書71 史臣評

 僧綽綢繆主心,將任以國重,而宮車晏駕。

・宋書73 顔延之

 前記室參軍、濟陽太守㚟伏勤蕃朝,綢繆恩舊。

・宋書75 王僧達

 故太保華容文昭公弘契闊歷朝,綢繆眷遇。

・宋書78 劉延孫

 綢繆心膂,自蕃升朝,契闊唯舊,幾將二紀。

・宋書85 王景文

 卿清令才望……綢繆相與,何後殷鐵邪?

・宋書86 劉勔

 綢繆顧託,契闊屯夷,方倚謀猷,翌康帝道。


引用、というよりは特殊語彙としての地位を確立している印象がある。どれもまとわりつく、巻き付くと言った意味の雅語として用いられておるようである。




毛詩正義

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