揚之水(君子を求める/謀叛の芽)

揚之水ようしすい



揚之水ようしすい 白石鑿鑿はくせきさくさく

素衣朱襮そいしゅはく 從子于沃じゅうしうよく

既見君子きけんくんし 云何不樂うんかふがく

 跳ね上がる川の水を浴び、

 白い石がキラキラと。

 白い着物に赤い袖、

 曲沃の城の殿様に従おう。

 あのようなお方と出会えれば、

 どんなに幸いなことだろう。


揚之水ようしすい 白石皓皓はくせきこうこう

素衣朱繡そいしゅしゅう 從子于鵠じゅうしうこう

既見君子きけんくんし 云何其憂うんかきゆう

 跳ね上がる川の水を浴び、

 白い石が燦然と。

 白い着物に赤い刺繍、

 鵠城の殿様に従おう。

 あのようなお方と出会えれば、

 憂いなど吹き飛ぼう。


揚之水ようしすい 白石粼粼はくせきりんりん

我聞有命がぶんゆうめい 不敢以告人ふかんじこくじん

 跳ね上がる川の水を浴び、

 白い石が透き通るよう。

 私が受けた密命、

 決して他人には洩らすまいぞ。




○国風 唐風 揚之水


第一連、第二連の清々しき雰囲気が、第三連で吹き飛ぶ。凄まじい。これはあれだな、曲沃、鵠城のお殿様はそれぞれ偉大であるが、そんな彼らの監視あるいはスパイ活動として忍び込む、という感じにはなってこぬだろうか。あるいは、この辺りの詩のふいんきに、いわゆる「刺史」の職掌を見て取るのが良いのかな。


※刺史:漢末~南北朝にかけて各州に配属され、州に属する各郡の太守が職務を全うしているのかを、監視役を通じてチェックする役職。故に「刺」す行政官、という名前である。後世になるとその辺りが形骸化し、州の長官という形で役職が変わって行ったのだが。




○儒家センセー のたまわく


当詩でも晋の昭公を批判する! 昭公は領内の曲沃城を叔父の桓叔に割譲した! 結果曲沃の勢力が強まり、晋の国威は衰えた! 鵠城とは桓叔が詰めていた城の名である! 国に背く者を「君子」と呼ぶのにはいささか抵抗もあろうが、ここは皮肉として取るべきであろう!




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%85%AD#%E3%80%8A%E6%8F%9A%E4%B9%8B%E6%B0%B4%E3%80%8B

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