崔浩コラム⑩ 毛詩正義を読んでみよう

ごきげんよう、崔浩である。

当作にては各詩の最後に、必ず

毛詩正義へのリンクを設けておる。


実際のところ、

ただの漢文であるからな。

特に読んでいただく必要もないのだが。


とは申せ、そこに実際に

踏み込んでいただくと、

また少し面白みがあるのやもしれぬ。


そこで今回「鄭風」より、

最も短い毛詩正義条文を拾い、

訳出してみようと思う。


「あ、こーゆーノリなのね」と

実感していただければ幸いである。



〇毛詩正義 風雨


「風雨」は、君子を思う詩である!

世が乱れた暁には名君を請い求める、

この原則はいつの世も変わらぬ!


以下、字句について解釈いたす!



風雨淒淒 雞鳴喈喈

 歌唱者の感情を歌っておる!

 風雨のすさまじさ、

 その中にあって鶏が鳴く!

 その健気さに感じ入っておる!


 鄭玄は言っておる!

 ここで歌唱者が感じ入っておるのは、

 名君が乱世の中にあっても、

 その誇り高きたたずまいを

 ゆらがさぬことについてである、と!


 なお「淒」字は子音が「七」字と、

 母音が「西」字と共通である!


 「喈」字は「皆」字と同じ読みをする!



既見君子 云胡不夷

 「胡」字は「何」字として解釈せよ!

 「夷」字は「說」字として解釈せよ!


 鄭玄は言う!

 君子への思いを胸に抱きつつ、

 実際に、その実物を

 目の当たりとするのである!

 どうして喜ばずにおれようか!


 なお「説」は「悦」字として扱われる!

 読み方も同じである!



ここで再度上掲四句を解釈しよう!

雨や風によって寒々しておる中、

鶏はいつもと同じ時間に、スコーンと、

あの鳴き声を上げるわけである!


どれほどの風雨に遭おうとも、

鶏がその鳴き方を変えることはない!

ゆえにこれを君子が乱世にあっても

誇り高くあり続けられる様に例えた!


こんにち、これだけ誇り高くおれる者が、

果たしていかほどおれようか!

そして、万が一そのような人物に

出会えたとしたならば、

どうして喜ばずにおれようか!


かような大いなる喜びを、

この四句は描いておる!


今少し字句解釈をしておこう!

小雅 谷風之什のひとつである

「四月」に、「秋日淒淒」句が見える!

これは寒々しいことを意味し、

すなわち雨の天気がクッソ寒いと

語っているのである!


次の四句には「瀟瀟」が見えておるが、

これはいきなり雨が

降り出してきたことを言う!

「淒淒」とは意味が異なるのであり、

このため次章解釈において

瀟瀟を「いきなり、突然」としておる!


喈喈と膠膠はどちらも

コケコッコーの訳である!

ゆえに次章解釈において

「なお喈喈なり」と言っておる!


ところで、どうして

「胡」が「何」になるのか!

しょうがないのだ!

「書傳」の通訓にそう載っていたので!


「夷」が「悅」になるのか!

しょうがないのだ!

「釋言」にそう載っていたので!


もっとも定本には「胡は何だよ」

などとは書かれておらなかったがな!



風雨瀟瀟 雞鳴膠膠

 瀟瀟は「いきなり、突然」である!

 膠膠は「なお喈喈なり」である!

 

 瀟は蕭と同じ読み!

 膠は交と同じ読みである!



既見君子 云胡不瘳

 瘳は愈える、の意である!

 なお子音が敕と、母音が留と同じ!

 つまり音読みならば「ちゅう」である!



風雨如晦 雞鳴不已

 晦は昏くなること!

 

 鄭玄は言う!

 已は止まることを言う!

 鶏は風雨によって

 空が暗かろうとも、

 鳴くことをやめはせぬ!

 そういうことである!



既見君子 云胡不喜

 特に言うことはない!



以上、風雨! 三章構成、

一章は四句で構成されておる!




〇毛詩正義 風雨 原文


《風雨》,思君子也。亂世則思君子,不改其度焉。


風雨淒淒,雞鳴喈喈。(興也。風且雨,淒淒然,雞猶守時而鳴,喈喈然。箋云:興者,喻君子雖居亂世,不變改其節度。○淒,七西反。喈音皆。)既見君子,云胡不夷?(胡,何。夷,說也。箋云:思而見之,云何而心不說?○說音悅,下同。)


疏「風雨」至「不夷」。○正義曰:言風雨且雨,寒涼淒淒然。雞以守時而鳴,音聲喈喈然。此雞雖逢風雨,不變其鳴,喻君子雖居亂世,不改其節。今日時世無復有此人。若既得見此不改其度之君子,云何而得不悅?言其必大悅也。○傳「風且」至「喈喈然」。○正義曰:《四月》云「秋日淒淒」,寒涼之意,言雨氣寒也。二章「瀟瀟」,謂雨下急疾瀟瀟然,與淒淒意異,故下傳云:「瀟瀟,暴疾。」喈喈、膠膠則俱是鳴辭,故云「猶喈喈也」。○傳「胡,何。夷,說」。○ 正義曰:胡之為何,《書傳》通訓。「夷,悅」,《釋言》文。定本無「胡何」二字。


風雨瀟瀟,雞鳴膠膠。(瀟瀟,暴疾也。膠膠,猶喈喈也。○瀟音蕭。膠音交。)既見君子,云胡不瘳?(瘳,愈也。○瘳,敕留反。)


風雨如晦,雞鳴不已。(晦,昏也。箋云:已,止也。雞不為如晦而止不鳴。○不為,於偽反。)既見君子,云胡不喜?


《風雨》三章,章四句。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る