秦風(しんふう)

車鄰(引用1:いまを楽しむ/君主と共に楽しむ)

車鄰しゃりん



有車鄰鄰ゆうしゃりんりん 有馬白顛ゆうばはくてん

未見君子みけんくんし 寺人之令じじんしれい

 車につく鈴、りんりんと。

 車引く馬の額は白。

 主はまだお出ましにならぬ。

 やがて小姓が、お出ましを伝える。


阪有漆はんゆうしつ 隰有栗しつゆうりつ

既見君子きけんくんし 並坐鼓瑟へいざこしつ

今者不樂こんしゃふがく 逝者其耋せいしゃきてつ

 坂にウルシが、

 湿原にクリがあるように、

 君子にもまたあるべき場所がある。

 皆が居並び、琴を弾く。

 いまを楽しまねば、

 すぐに年老いてしまう。 


阪有桑はんゆうそう 隰有楊しつゆうよう

既見君子きけんくんし 並坐鼓簧へいざここう

今者不樂こんしゃふがく 逝者其亡せいしゃきぼう

 坂にクワが、

 湿原にヤナギがあるように、

 君子にもまたあるべき場所がある。

 皆が居並び、笛を吹く。

 いまを楽しまねば、

 すぐに死んでしまう。




○国風 秦風 車鄰


素晴らしき君主が、民と共に楽しむ姿を描くかのようである。今を共に楽しまねば、すぐに老い、死んでしまうのだ。やりたいことは、思い立ったその瞬間が「最も若い日」である。我慢しておれる場合であろうか。




○儒家センセー のたまわく


当詩は秦の国を興すに至った秦仲を称揚する詩である! もともと西戎でしかなかった秦の者たちは、秦仲が周王室に対する多大な功を挙げたため列侯の座を得た! なお唐風の蟋蟀と似た趣旨であるが、あちらが節度持って楽しもうであるのに対し、こちらは思う存分楽しもう、であるところに秦と晋との風土の違いを見て取ることができよう!





■西涼の君主はすごい


晋書87 史臣評

若乃詩褒秦仲、後嗣建削平之業。


西涼とは五胡十六国時代において最も西にあり、いまいち存在感の薄い国である。ただ漢人の立てた国であり、晋のシンパであったため晋書では「いい奴」として書かれている。その君主である李暠を讃えるにあたって、「秦仲が褒められた感じで彼も頑張ったね! まぁ後継ぎがクソだったけどね!」と言われておるのである(西涼は息子の代で滅亡)。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%85%AD#%E3%80%8A%E8%BB%8A%E9%84%B0%E3%80%8B

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