陟岵(引用2:出征した戦士、家族を思う)

陟岵ちょくこ



陟彼岵兮ちょくかこけい 瞻望父兮せんぼうふけい

父曰嗟ふえつさ 予子行役よしこうえき 夙夜無已しゅくやむい

上慎旃哉じょうしんせんか 猶來無止ゆうらいむし

 あの岩山の上にのぼり、

 遥か父のいる地を望む。

 父は仰っておろう、ああ。

 息子どのよ、励まれよ。

 日夜なく、励まれよ。

 そして、どうか無事で帰ってきてほしい。

 かの地にいたまま戻って来ない、

 などとは、あってほしくないのだ、と。


陟彼屺兮ちょくかきけい 瞻望母兮せんぼうぼけい

母曰嗟ぼえつさ 予季行役よきこうえき 夙夜無寐しゅくやむび

上慎旃哉じょうしんせんか 猶來無棄ゆうらいむき

 あの岩山の上にのぼり、

 遥か母のいる地を望む。

 母は仰っておろう、ああ。

 我が愛しい子、励まれよ。

 日夜なく、寝てもおれまい。

 どうか、無事で帰ってきてほしい。

 かの地にいたまま戻って来ない、

 などとは、あってほしくないのだ、と。


陟彼岡兮ちょくかがんけい 瞻望兄兮せんぼうけいけい

兄曰嗟けいえつさ 予弟行役よていこうえき 夙夜必偕しゅくやひつかい

上慎旃哉じょうしんせんか 猶來無死ゆうらいむし

 あの岡にのぼり、

 遥か兄のいる地を望む。

 兄は仰っておろう、ああ。

 我が弟どのよ、励まれよ。

 日夜なく、同僚どのと共に。

 そして、どうか無事で帰ってきてほしい。

 間違っても、死んでなどくれるな、と。




〇国風 魏風 陟岵


出征した兵士が、故郷にいる両親や兄を思う。兄は嫡男であるから家のために残り、親の財産を継承しきれぬ弟たちが兵役に駆り出される。父や母は息子に「死」という直接的な言葉を使うことも叶わず、兄にいたり、ようやくストレートな願いが言葉となる。

以上はこの次男坊氏三男坊氏の主観であり、もしかしたら家では食い扶持が減ったことを喜んでおるのやも知れぬな。




〇儒家センセー のたまわく


崔浩殿は人でなしなのではないか……?




■前燕の申紹、主の乱政を諫める


晋書111 慕容暐載記

宜嚴制軍科,務先饒復,習兵教戰,使偏伍有常,從戎之外,足營私業,父兄有陟岵之觀,子弟懷孔爾之顧,雖赴水火,何所不從!


陛下、ほんとお願いですから国内外の状態をきっちり整えてください、そうやって足場を固めることで、初めて父や兄は当詩で描かれているような思いを飲み込むことができるし、「孔爾の顧」(謎。まぁおそらく似たような内容なのであろう)があったとしても、火の中水の中と赴いてくれるようになるのだ、と説く。つまり申紹はそれが全くできていない前燕の状況を深く憂えておるのである。




■敵地の父を思う人


宋書64 鄭鮮之伝

滕但當盡陟岵之哀,擬不仕者之心,何爲證喻前人,以自通乎?


滕恬という人が胡族の翟遼によって殺されるも、その屍が戻って来ない。このような中にあって息子の滕羨は喪に服さず、引き続き勤務を続けていた。そう言うの「孝」的にどうなのよ、と周囲が議論している中、鄭鮮之はひとり「陟岵の哀しみ」を抱えていながらも働くってことは別にあり得なくもないだろう、と返す感じである。いまいちよくわからぬが。鄭鮮之伝は、割と長からぬ伝の約半分がこの議論にまつわる意見である。よほど重要なテーマなのだと見受けられるが、よくわからぬものはわからぬので仕方がない。




毛詩正義

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