遵大路(引用2:去る恋人にすがる/去る君子にすがる)

遵大路じゅんだいろ



遵大路兮じゅんだいろけい 摻執子之袪兮さんしつししきょうけい

無我惡兮むがあくけい 不寁故也ふしょうこや

 去りゆくあなたを大路に追い、

 その袖口に縋りつく。

 私を憎んでくださるな。

 古いよしみをお捨てなさるな。


遵大路兮じゅんだいろけい 摻執子之手兮さんしつししゅけい

無我魗兮むがしゅうけい 不寁好也ふしょうこうや

 去りゆくあなたを大路に追い、

 その手に取りすがる。

 私をはしたないと思うてくださるな。

 古いよしみをお捨てなさるな。




〇国風 鄭風 遵大路


恋人に捨てられようとするものが、人目もはばからず恋人に縋る詩のように見えるな。演歌、実に演歌であるな。朱子学においては「淫婦が恋人に捨てられる」としておるが、いやこれ、別に主人公が男女どちらでも普通に成立せぬか……?




〇儒家センセー のたまわく


鄭の荘公あるいは文公の無体に、その下で働いていた君子が主に見切りをつけ国を去らんとする! 国人がそれを悲しみ、君子に厭われるのも構わず取りすがり、留まってほしいと哀願する詩である!




■高貴郷公曹髦、自らを評す


三國志4 高貴鄉公裴注

以眇眇之身,質性頑固,未能涉道,而遵大路,臨深履冰,涕泗憂懼。


私は未熟だし頑固、世渡りも下手だが、しかし大いなる道に従い、薄氷の上を渡るかのごとき心地で歩み、恐れや憂いに涙している、と、己の不足を嘆くかのような表明をしておる。即位のタイミングからして既に司馬氏の権勢真っただ中であり、己の置かれる環境についてはいくら嘆いても歎き足らなんだことであろう。




■崔琰、曹丕の遊蕩を叱る。


三國志12 崔琰

公親御戎馬,上下勞惨,世子宜遵大路,慎以行正,思經國之高略,内鑒近戒,外揚遠節,深惟儲副,以身爲寶。


お前のパパは戦争で忙しく飛び回り、下々が疲れ果ててんだろ、ならその後継者は大いなる道を行き、国威強化のための内政に励みつつ外征計画を練り、お国のサブとして己が身を大切にしろ、つまりホイホイ狩とかに出てんじゃねえよ、という事である。崔琰さんマジおこである。




上記二引用は、どちらも詩の内容とはやや外れている。ただし「大路に遵う」という表現が多分に政治的な色合いを持つ、という部分では共通しているのやも知れぬ。これについては「ただ、語句のみを拾った」と考えるのが良いのかな。何か別ルートの拾い方が存在しているのやも知れぬ。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%9B%9B#%E3%80%8A%E9%81%B5%E5%A4%A7%E8%B7%AF%E3%80%8B

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