羔裘(引用2:立派な士大夫の姿/昔はよかった)

羔裘こうきゅう



羔裘如濡こうきゅうじょだ 洵直且侯じゅんちょくしょこう

彼其之子かきしし 舍命不渝しゃめいふゆう

 子羊の皮衣はつややか。

 君主の徳を示すかのよう。

 あのお方は、天命にあるからと、

 みだりに節をお曲げにならぬ方。


羔裘豹飾こうきゅうひょうしょく 孔武有力こうぶゆうりき

彼其之子かきしし 邦之司直ほうししちょく

 子羊の皮衣の袖口を

 豹の毛皮で飾る。

 その雄々しさが示される。

 あのお方は立派なお方。

 お国の司直たるべきお方。


羔裘晏兮こうきゅうあんけい 三英粲兮さんえいさんけい

彼其之子かきしし 邦之彥兮ほうしげんけい

 子羊の皮衣は燦然とし、

 白糸の三つの飾りもまた輝く。

 あのお方は立派なお方。

 お国のお手本となるお方。




〇国風 鄭風 羔裘


「人は見た目が九割」という言説もある。立派な衣服は、威風堂々たる気迫を伴うものが着てこそ映える。これは間違いのなきことであろう。そして「立派な士大夫であるからこそ」かれの着る衣服もまた輝きを放つわけである。




〇儒家センセー のたまわく


古の君主はかくのごとく立派ないでたちでいた! しかるに今の君主はどうであろうか! まったくこの詩にそぐわぬではないか! あぁ、昔はよかった! 昔はよかった!




〇崔浩先生、おなかを抑える

(……!)




■ソソサマそう言う褒め方好きよね


三國志巻12 徐奕じょえき

『昔楚有子玉,文公爲之侧席而坐;汲黯在朝,淮南爲之折謀。詩稱「邦之司直」,君之謂與!』


徐奕は諫言をしまくる人。曹操そうそうは「そなたのような者がいて、初めて朝廷は引き締まるのだ!」と、昔諫言を口酸っぱくなした子玉しぎょく漢武帝かんぶてい期の汲黯きゅうあん淮南わいなん劉安りゅうあんの謀叛の野望をくじいた)のごときものとして讃えたあと当詩を引用しているわけである。要はべた褒めである。




■仇からの贈り物はファック


晋書89 羅企生らきしょう

先是,玄以羔裘遺企生母胡氏,及企生遇害,即日焚裘。


羅企生は桓玄かんげんに滅ぼされた勢力、殷仲堪いんちゅうかんの部下として働いていた。桓玄は敵ながら羅企生のことを高く買っていたため、最後まで自らの配下に加えたいと粘ったのだが、結局羅企生は主に殉じる道を選んだ。桓玄が羅企生の母に送った羔裘は、おそらく羅企生に着せたかったものである。「私はあなたの息子と共に働きたかったのです」という意思表示、となるだろうか。無論母氏、そんなもの仇に送られてきても「クソが○ね」としか思えるまい。燃やした。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%9B%9B#%E3%80%8A%E7%BE%94%E8%A3%98%E3%80%8B

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