兔爰(引用1:ひきこもりのうた/衰乱の世を儚む)
兎が悠々と跳ね回る中、
キジが網にかかっている。
生まれたばかりのころには
トラブルなきことを願ったのに、
生まれたのちの世では、
多くのわざわいに出会った。
もうただ寝ていたい。
動きたくない。
兎が悠々と跳ね回る中、
キジが網にかかっている。
生まれたばかりのころには
平和を願ったのに、
生まれたのちの世では、
多くの憂うべきことに出会った。
もうただ寝ていたい。
何も知りたくない。
兎が悠々と跳ね回る中、
キジが網にかかっている。
生まれたばかりのころには
苦労なきことを願ったのに、
生まれたのちの世では、
多くの悪事に出会った。
もうただ寝ていたい。
何も感じずにいたい。
〇国風 王風 兔爰
兎はずるがしこい小者。キジは美しく正しき存在。悪者がのうのうとのさばり、自らは世の不幸に巻き込まれ憂悶を抱えてばかり。こんなことになるのであればこの世に現れ出なければよかった、というわけである。うむ。引きこもりにとっては福音のような詩であるな! 何も解決せぬがな!
〇儒家センセー のたまわく
周の世が荒れに荒れ、こんなトラブル続きの世の中であれば生まれてこぬ方がまだマシであった、と歌ったものである! 衰乱の世、人々は生そのものをはかなまずにはおれぬ!
■晋書 后妃伝にて引用
晋書巻32 后妃伝下 康獻褚皇后伝
桓溫之廢海西公也,太后……云:「未亡人罹此百憂,感念存沒,心焉如割。」
桓温が海西公を廃し、簡文帝を帝位につけようとしたときのこと。「廃したいんですけど、どないですやろ?」という桓温よりの諮問に対し、褚皇太后(なにせ三代前の皇帝のお后である)が絶望しながら漏らしたコメントである。「この未亡人に多くの憂いが降りかかってきており、思いは沈み、心は割れんばかり」とのことである。「もうこれ以上狡猾な兎が好きに跳ね回っているのはみたくない!」という思いの表れであろうかな。(情報提供:深山氏)
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%9B%9B#%E3%80%8A%E5%85%94%E7%88%B0%E3%80%8B
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