揚之水(引用1:守備兵たちの怨嗟)

揚之水ようしすい



揚之水ようしすい 不流束薪ふりゅうそくしん 

彼其之子かきしし 不與我戍申ふよがじゅうしん 

懷哉懷哉かいやかいや 曷月予還歸哉かつげつよかんきや 

 激しく波立つ水の流れは、

 しかし束ねた薪も流しきれない。

 似たように、今の国力では、

 彼らに、我らとともに申の国を

 守ってもらうのも難しい。

 ああ、故郷を思い出してならない。

 いつになれば、私は帰れるのか。


揚之水ようしすい 不流束楚ふりゅうそくそ 

彼其之子かきしし 不與我戍甫ふよがじゅうほ 

懷哉懷哉かいやかいや 曷月予還歸哉かつげつよかんきや 

 激しく波立つ水の流れは、

 しかし束ねた枝木も流しきれない。

 似たように、今の国力では、

 彼らに、我らとともに甫の国を

 守ってもらうのも難しい。

 ああ、故郷を思い出してならない。

 いつになれば、私は帰れるのか。


揚之水ようしすい 不流束蒲ふりゅうそくほ 

彼其之子かきしし 不與我戍許ふよがじゅうきょ 

懷哉懷哉かいやかいや 曷月予還歸哉かつげつとかんきや 

 激しく波立つ水の流れは、

 しかし束ねた藪木も流しきれない。

 似たように、今の国力では、

 彼らに、我らとともに許の国を

 守ってもらうのは難しい。

 ああ、故郷を思い出してならない。

 いつになれば、私は帰れるのか。




〇国風 王風 揚之水


多少波立ってこそおるものの、少しでも枝葉を束ねたものを浮かべれば流しきれないこの川のごとく、今の、勢いがないこの国では、我らの国は守りきれまい。そう嘆くわけである。この詩については申、甫、許、それぞれに歌うものの住まう地域名を当てはめ、そこに「水に浮かぶ、束ねられるもの」で韻を踏めば、またたく間に替え歌となる。替え歌を作りやすいこの詩は、さぞ国が揺らぐ折には流行ったことであろう。




〇儒家センセー のたまわく


前詩に引き続き、平王によって周の東遷がなされた後、いたずらに国境警備のため民衆が駆り出されていたことを恨む詩である! 駆り出された各地の守備隊のやる気のなさがありありと描かれており、それが同時多発的に起きていたことを示すのである!




■北魏攻めるとかクソですよ


宋書64 何承天

是故戍申作刺,怨起及瓜,今若以荊吳鋭師遠屯清濟,功費既重,嗟怨亦深。


宋の文帝劉義隆が北魏との戦いをどう展開しようかと問うたところ、何承天は「攻めるな」と答えた。その内の一節である。当詩「彼己之子,不與我戍申」と春秋左氏伝傳の莊公八年「及瓜而代」(瓜が生る頃には国公が変わる)とを組み合わせ、「今遠征軍を起してもまともに戦果が挙げられないどころか、どでかい政変が起こってもおかしくないぞ」と説くわけである。




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E

8D%B7%E5%9B%9B#%E3%80%8A%E6%8F%9A%E4%B9%8B%E6%B0%B3%80%8B

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