君子于役(出征した夫を憂う)

君子于役くんしうえき



君子于役くんしうえき 不知其期ふちきき 曷至哉かつしや 

雞棲于塒けいせいうーし 日之夕矣にちしゆういー 羊牛下來ようぎゅうからい 

君子于役くんしうえき 如之何勿思じょしかこつし 

 あのお方は戦に駆り出され、

 いつ帰れるかもわからぬ。

 いつお帰りになるのだろうか。

 鶏が小屋ですやすやと眠る。

 日も暮れて、羊や牛も、

 あの丘から戻ってくる。

 あのお方はいまだお役目のさなか。

 どうして思わずにおれようか。


君子于役くんしうえき 不日不月ふじつふげつ 曷其有佸かつきゆうかつ 

雞棲于桀けいせいうけつ 日之夕矣じつしゆういー 羊牛下括ようぎゅうかかつ 

君子于役くんしうえき 苟無飢渴こうむきかつ 

 あのお方は戦に駆り出され、

 帰還の日にちもわからない。

 またお会いすることは叶うのか。

 鶏がやすらかに小屋で眠る。

 日も暮れて、羊や牛も、

 あの丘から降りてくる。

 あのお方はいまだお役目のさなか。

 どうかひもじい思いをなさいますな。




〇国風 王風 君子于役


夫が出征、公役に出る恐怖は、現代とは全く質が違うのであろうな。現代には高速移動の叶う乗り物があり、一昔前なら電話が、現在ならネットが「いま」をつなぐことがかなった。しかしこの折に移動手段は徒歩以外になく、ともなれば盗賊の餌食になるものも、行程での病に倒れるものもおったであろう。そして手紙を書いたところで、確実に届く保証もない。そこまでを織り込み、それでも妻は見送らねばならぬ。その思いを、いかほどシリアスに受け止めることが叶おうか。斯様に思わずにおれぬのである。




〇儒家センセー のたまわく


この詩は周の平王が蛮族の侵攻を受け東に逃れねばならなくなり、国家防衛のために多くの兵を動員せねばならなくなったことを批判するのである!




毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E5%9B%9B#%E3%80%8A%E5%90%9B%E5%AD%90%E6%96%BC%E5%BD%B9%E3%80%8B

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