二子乘舟(死出の旅路を見送る/公子の死を悼む)

二子乘舟にしじょうしゅう 引用1件

見送り 葬送 衛 乱政批判



二子乘舟にしじょうしゅう 汎汎其景はんはんきけい

願言思子がんげんしし 中心養養ちゅうしんようよう

 二人の名士が船でゆく。

 ゆるゆると流れる景色。

 あなた方の行く末が気がかりだ。

 心がそわそわとする。


二子乘舟にしじょうしゅう 汎汎其逝はんはんきせい

願言思子がんげんしし 不瑕有害ふかゆうがい

 二人の名士が船でゆく。

 どんぶらこと視界から消える。

 あなた方の行く末が気がかりだ。

 悪いことが起こらねば良いのだが。



○国風 邶風 二子乘舟

「子」の充て方によって読まれ方が全く変わってこよう。原釈では「子供」でとるようである。そしてここで彼らが乗っている舟を単純に「見たままの景色」としてもよいのだが「死出の旅路」とすることもある。

古代中国の死の概念を、実は微妙にわかっていない。「泉下/地下から見守る」といった表現もあるので、死後の世界を生きる、という形で良いのかな。



○儒家センセー のたまわく

「思伋、壽也。衛宣公之二子爭相為死,國人傷而思之,作是詩也。」

衛国でわざわいに遭って殺された衛の宣公の公子、伋および寿を悼む詩である! 二人は衛国の内乱に遭い、ともに殺された! ところで諸家は「誰それが船に乗ったことを言う」等語り合っておるが、両公子はそもそも車に乗ったところを殺されており、船には載っておらぬ! 詩はそのメンタリティを読むものであり事実に拘泥するのは何とも愚かしきことである! 「二人の公子が、涅槃のかなたに消えてゆく」! それをもって衛国の政治の愚劣なるを批判すべきなのである!



■かばい合う兄弟の美しさ

宋書巻91 蔣恭伝

蔑爾恭、協,而能行之,茲乃終古之所希,盛世之嘉事。二子乘舟,無以過此。豈宜拘執憲文,加以罪戮。


嫁の弟が起こした強盗事件に巻き込まれた蔣協、蔣恭兄弟は、二人ともが我先に罰を受けます、と言い出してきた。その振る舞いに感じ入った担当官吏が、「この二人を罰するなど二子乘舟にあることよりもひどいことだ」と、特別に二人の罪を不問とした。ちなみにこの当時の強盗事件は起こした犯人の家族もろとも処刑、という非常に厳しい処罰である。



毛詩正義

https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%BA%8C#%E3%80%8A%E4%BA%8C%E5%AD%90%E4%B9%98%E8%88%9F%E3%80%8B

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