江有汜(好きな子が嫁に/側女の有能さを思う)
男→女 失恋 未練 側女 妃の後悔
大河に支流あり。
あの子は嫁に行くが、
私を置いていこうとしている。
そんなことをして、
あとで後悔しても知らないよ。
大河に渚あり。
あの子は嫁に行くが、
私は一緒ではない。
とはいっても、きっと後で
一緒になるんでしょうけど。
大河に分流あり。
あの子は嫁に行くが、
私のもとには立ち寄ってくれない。
とはいっても、のちのちには
一緒に歌うことになるのでしょう。
〇国風 召南 江有汜
異説がいろいろと飛ぶ詩である。しかしここではやはり、もっとも情けない方向で解釈しておきたいものだな。すなわち「好きな子が嫁に行ってしまい、置いてけぼりを食らった男」である。未練たらたらであるな、情けないな。たまらぬな。
〇儒家センセー のたまわく
「美媵也。勤而無怨。嫡能悔過也。文王之時。江沱之閒。有嫡不以其媵備數。媵遇勞而無怨。嫡亦自悔也。」
妃が側女に適切な才覚を有したもの(媵)を讃える歌である! 輿入り前の妃のためにかいがいしく働いていた彼女は、しかし異国に向かう妃とは共にはいなかった! 彼女が隣におらぬ事で、否応なしに妃は彼女の有能さを思い知り、この詩にて彼女の思いを想像し、歌ったのである!
〇後日の人、解釈す
「子」ってこの当時立派な士大夫のこと指すじゃん? ってこたこれ、夫に捨てられた妻がうたった詩なんじゃね? ヒュー、いじましいー!
■うちのご先祖すげー
漢書100.1 敍傳上
黎淳耀于高辛兮,羋彊大於南汜;
漢書を編んだ班固は、楚の王族に連なる。なので自らの出生を歌う中で五帝嚳に仕えた楚の始祖「黎」と、そこから連なる「羋」姓の人々が汜水の南で活躍したと歌い上げるのである。
■私とともにあらず
やや一般句にも近い気はせぬでもないのだが、ここはあえて当詩よりの引用と言い切っておこうと思う。と言うのも晋書での用例が面白すぎたのである。明らかに嵆康が幽憤詩でものした表現に憧れて、フォロワー達が己の「時にない」さまに嘆く折に用いておる。そして宋書以降、この用法は現れぬ。THE☆流行り廃り、であるな。
・左伝 昭公12
今鄭人貪賴其田。而不我與我。若求之。其與我乎。
・論語 陽貨1
日月逝矣。歲不我與。
・後漢書64 趙岐
大丈夫生世,遯無箕山之操,仕無伊、呂之勳,天不我與,復何言哉!
・晋書49 嵆康
對答鄙訊,縶此幽阻,實恥訟寃,時不我與。
・晋書51 束晳
歲不我與,時若奔駟,有來無反,難得易失。
・晋書62 劉琨
時哉不我與,去矣如雲浮。
・晋書70 応詹
豈悟時不我與,長即幽冥,永言莫從,能不慨悵!
・晋書92 趙至
時不我與,垂翼遠逝,鋒距靡加,六翮摧屈,自非知命,孰能不憤悒者哉!
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%80#%E3%80%8A%E6%B1%9F%E6%9C%89%E6%B1%9C%E3%80%8B
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