小星(妾が主人のもとに赴く/妻の不妬の徳)
側妾 女→男 正妻の徳 不妬
小さな星々が
三つ、五つと、東の空に。
夜つつましく、公の御もとへ赴く。
ただし、ずっと夜おそばに
居続けることは許されない。
どうして夫人となど
同じ立場でおれましょう。
小さな星々、あれはプレアデス、
あるいはオリオンの三つ星。
夜つつましく、公の御もとへと赴く。
自らの布団と寝間着は、
自らでもっていかねばならない。
どうして夫人となど
同じ立場でおれましょう。
〇国風 召南 小星
妾が夫たる公のもとへと向かうときに夜空を見る。自分はそこに輝く星々のうち、例えば惑星や一等星のように夜空で存在感を示す星々でなどなく、群がる星々の一つに過ぎないのだ……と嘆じる歌である。
〇儒家センセー のたまわく
「惠及下也。夫人無妒忌之行,惠及賤妾,進禦於君,知其命有貴賤,能盡其心矣。」
妾たちは妻の恩情により夫よりの寵愛を得ておる! すなわちこの詩に歌われておるのはやはり「不妬」の徳である! 妾が妾なりの立場をわきまえよく妻に仕え、妻はそんな妾たちを大切な部下として遇する! これがあるべき家の姿であるな!
〇崔浩先生 ツッコむ
いやどこをどう読んでも主体が「妾」側にあろう。何を言っておるのだ。
■紹介済み引用
夙夜在公→召南采蘩
■天文志に見る「小星」の存在
当詩に載るような「随伴者、次席以下」の存在に対応する星、と言う説明は、天文志上にも見受けられる。引用とはやや違うのだが、当詩の詩情を理解する上でも、この辺りの記述が存在しておると知っておけるのは有意義なのではなかろうか。
・後漢書100 天文上
六月戊戍晨,小流星百枚以上,四面行。小星者,庶民之類。流行者,移徙之象也。
・宋書24 天文二
小星相隨,小將別帥之象也。
・宋書26 天文四
流星為民,大星大臣流,小星小民流。
■小星離散
・晋書巻13 天文志
・宋書巻24 天文志
永嘉元年十二月丁亥,星流震散。案劉向說:「天官列宿,在位之象,小星無名者,庶民之類。此百官庶民將流散之象也。」是後天下大亂,百官萬民,流移轉死矣。
永嘉元年、即ち八王の乱収束直後である。この時に流星群が発生。流星群については、漢代の学者劉向が「星座は位にあるものを指すが、小さな星は庶民、無名のものを指す。それが散るという事は、無名の者が離散の苦しみを味わうことになる」と解釈していた。そして間もなく起こるのが、永嘉の乱。この乱によって民は離散の苦しみを味わった。
■子星孫星は、詩に歌われたあれ?
魏書91 張淵
子孫嘒嘒於參嵎。-嘒,小貌。孫二星,在子東。詩云:「嘒彼小星,三五在東。」此之謂乎?
張淵は北魏が夏を滅ぼしたときに獲得した星見役。「私は苻堅様の頃から仕えておりました」などと言っておる。その者が著した詩の一節にて「「子」や「孫」といった星座は、「参」という星座の横で細々と輝いている。当詩の言う「三つ、五つとあるおぼろげではかない星は、これらの星を示しているのではないか?」と注釈されている。
「小星」は一般名詞にも過ぎるのでなかなか詩経引用とも言いづらい。なのでここでは、史書に用いられる用法のうち、やや詩の意味に寄っているものを紹介させて頂くこととした。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%80#%E3%80%8A%E5%B0%8F%E6%98%9F%E3%80%8B
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