采蘩(夫の家の祭事を請け負う妻)
妻の仕事 神への捧げ物 草摘み歌 祭祀取り仕切り
ヨモギを取ろう、沼のみぎわに。
お供えしよう、諸侯の祭りに。
ヨモギを取ろう、谷のせせらぎ。
お供えしよう、諸侯の宮殿に。
彼女の髪形はうるわしく、
つつしんで夫に仕える。
彼女の髪形はつつましく、
祭りを終えれば
ほっと吐息をつき、静かに引き下がる。
○国風 召南 采蘩
妻は「家の祭事」を取り仕切り、夫は「家のための食い扶持」を確保する。どちらに優劣があるものでもないようには思うが、どうしても夫上位であるかのように取り扱わねばならぬのが厄介であるな。
○儒家センセー のたまわく
「夫人不失職也。夫人可以奉祭祀。則不失職矣。」
諸侯の妻が夫の家の祭祀を取り仕切るさまが描かれておる! それを立派にこなすことこそが妻たるものに求められる責務である!
■真心さえあれば
左伝 隠公3年4月
況君子結二國之信。行之以禮。又焉用質。風有采繁。采蘋。雅有行葦。泂酌。昭忠信也。
隠公三年にある孔子のコメントである。周の平王が他国と真心のこもらぬ人質交換を決めたせいで、却って外交関係がこじれたことを批判する。真心さえあるのであれば、約束の証なぞ粗末なものでも良いだろう、と語り、それを当詩、召南采蘋、大雅行葦、大雅泂酌が示しておるではないか、と語るのである。
■主と臣下のありようを
左伝 文公3-4
『詩』曰:「于以采蘩?于沼于沚。于以用之?公侯之事。」秦穆有焉;「夙夜匪解,以事一人。」孟明有焉;「詒厥孫謀,以燕翼子。」子桑有焉。
秦の穆公が覇者たり得た理由は秦の穆公が子桑の推挙を採用し、孟明を得たことにある、とする。当詩の「ヨモギを適切な場所で摘み、適切な場所で用いた」を、穆公の適切な人材運用にかけ、大雅烝民の「日夜怠りなくひとりの君に使える」を孟明の精勤ぶりにかけ、そして大雅文王有聲の「子孫のためのはかりごとで、子孫を安んぜんとする」を、子桑の将来を見越した推挙にかけた、と言うわけである。
■詩の暗誦は外交
左伝 昭公1
趙孟。叔孫豹。曹大夫。入于鄭。鄭伯兼享之。子皮戒趙孟。禮終。趙孟賦瓠葉。子皮遂戒穆叔。且告之。穆叔曰。趙孟欲一獻。子其從之。子皮曰。敢乎。穆叔曰。夫人之所欲也。又何不敢。及享。具五獻之籩豆於幕下。趙孟辭。私於子產曰。武請於冢宰矣。乃用一獻。趙孟為客。禮終乃宴。穆叔賦鵲巢。趙孟曰。武不堪也。又賦采蘩。曰。小國為蘩。大國省穡而用之。其何實非命。子皮賦野有死麕之卒章。趙孟賦常棣。且曰吾兄弟比以安。尨也可使無吠。穆叔。子皮。及曹大夫。興拜。
長いが許されよ。楚でひどい目に遭った人たちが楚から脱出後、バカスカ詩経の歌を歌って含意を暗に示す気違った真似を繰り広げておる。やめて頂きたいものだ(よだれ)。ともあれこの内容を追ってみよう。楚から脱出して後、鄭に逗留することになった趙孟、叔孫豹、曹の大夫の三名。主賓は趙孟であるが、その趙孟が初手を取り、歌う。
「瓠葉」(宴は質素でお願い!)
願いが聞き入れられ質素になった宴では、叔孫豹が口火を切る。
「鵲巢」(助けてくれてサンキュー!)
「采蘩」(あんたのお願い聞くぜ!)
そこにギャラリーの子皮が歌う。
「野有死麕」(楚に好き勝手させるな!)
最後に趙孟が歌う。
「常棣」(仲良くして楚を防ごうぜ!)
お、おう……?
と、原文を読んでみたら、当詩を歌うことで「自国のヨモギを摘んだ」こととし、そのヨモギを役立ててほしいのだ、と語っておるようである。そういう用例もあるのか……。
■劉太尉しゅごい! 宋公になって!(要検討
宋書2 劉裕中
抑末敦本,務農重積,采蘩實殷,稼穡惟阜。
劉裕が北伐し、洛陽を奪還した直後に安帝より受けた詔勅の一部である。「政に本来関係ない部分を抑えて根本を厚くした」、つまりこの場合は農業の奨励、及び土断政策(流民を戸籍人口に編入することによって税収を健全化させた)等による食糧の充実を語る。あえて牽強付会的に語れば「劉裕の存在は皇帝の妻的な政治的役割」とも言えそうであるかな。
■朝な夜なにお仕えを
「夙夜在公」句は、当詩以外にも召南小星、
魯頌有駜にも見えている。朝早くから夜遅くまで「公事」に勤める意味合いである。まぁ、「精勤していらっしゃいます」の雅語であるな。
・後漢書71 皇甫嵩
嵩曰:「夙夜在公,心不忘忠,何故不安?」
・三國志16 杜恕
今大臣親奉明詔,給事目下,其有夙夜在公,恪勤特立
・晋書43 山濤
參議以為無專節之尚,違在公之義。
・晋書45 劉毅
毅夙夜在公,坐而待旦,言議切直,無所曲撓,為朝野之所式瞻。
・晋書71 熊遠
王化未興者,皆羣公卿士不能夙夜在公,以益大化,素餐負乘,秕穢明時之責也。
・魏書63 宋弁
弁劬勞王事,夙夜在公,恩遇之甚,輩流莫及
・魏書65 李平
平自在度支,至於端副,夙夜在公,孜孜匪懈,凡處機密十有餘年,有獻替之稱。
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%80#%E3%80%8A%E9%87%87%E8%98%A9%E3%80%8B
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