麟之趾(国家繁栄への願い)
王の繁栄 国の繁栄
麒麟の足たる、
さても立派なみかどの子よ。
ああ、素晴らしき麒麟よ。
麒麟のひたいたる、
さても立派なみかどの子孫よ。
ああ、素晴らしき麒麟よ。
麒麟の角たる、
さても立派な貴族らよ。
ああ、素晴らしき麒麟よ。
○国風 周南 麟之趾
孔子が記したと言われる歴史書「春秋」は、その末尾を「獲麟」と記す。麒麟を得るのは、その国が繁栄する兆しである、という。そして周南の掉尾を飾るこのタイミングで、やはり麒麟を挙げるのは偶然ではあるまい。ちなみに真っ先に足が来ているのは、麒麟の生態において特に「生きている虫や草花を踏むことがない」ことが有名であったからであろう。
○儒家センセー のたまわく
「關雎之應也。關雎之化行。則天下無犯非禮。雖衰世之公子。皆信厚如麟趾之時也。」
この詩は周南冒頭の関雎を受けてのものである! 妃が徳化されれば、「麒麟を得る」かのごとく、国は繁栄しよう! 世が衰えても、人々はまた麒麟の出現を待ち望むものである!
■着々と進む、覇王への道
漢書6 武帝
今更黃金為麟趾 褭蹏以協瑞焉。
前漢武帝と言えば「おいらが天下を平和に導いた!」と盛大に漢の国庫を傾けながら放言した暴君として有名であるが、ここでも黄金を鋳つぶして麒麟の蹄にもしましたという話が見え、おぉ、もう……という感じである。ほんに武帝のエピソードはそのまま夏桀とか殷紂の所に持っていっても遜色ないのではあるまいか。
■妃とはどうあるべきか。
三國志5 明悼毛皇后 注
古之王者,必求令淑以對揚至德,恢王化於關雎,致淳風於麟趾。
王に相応しいのは、王の隣に立つに値する徳高き女性が配されるべき、と説く。その徳は同じ周南の「關雎」で称揚され、また国は当詩がごとく栄えるのであろう、と語るのである。なお「悼」の諡が語るように、のちに毛氏は死を賜っている。不品行のため、とのことである。つまり、この「べき論」に相応しくない女性であった、とするのである。
■天下統一ッ! HAPPY END!
宋書16 礼志三
若夫玄石素文,底號前載,象以姓表,言以事告,河圖、洛書之徵,不是過也。加以騶虞麟趾,眾瑞並臻。
西晋が天下統一をなしとげた時、司馬炎に対して衞瓘、山濤、魏舒、劉寔、張華と言ったそうそうたるメンツが「陛下、おめでとうございます! 黄帝も、禹王も、周文王もここまでの偉大な功績は挙げられませんでした! またここまで偉大なる業績は『河圖』『洛書』と言った予言書ですら見極め切れませんでした! さらに今、騶虞や麟趾と言った瑞祥も現れております! すなわち戦乱の世は終わりました! 陛下バンザーイ!」的に語っておる。立てるな、フラグを。
■なんか決まったらしい
魏書においては元善見、すなわち北魏の滅亡直前頃に「麟趾新制」なる制度ができたことを語る。ここで文襄王、つまり北斉髙洋の名前が挙がる以上、実質北西への禅譲(笑)にまつわるなにがしかだったのであろうな。
・魏書 12 元善見
詔文襄王與羣臣於麟趾閣議定新制,甲寅,班於天下。
・魏書84 李業興
興和初,又為甲子元曆,時見施用。復預議麟趾新制。
・魏書88 竇瑗
臣在平州之日,蒙班麟趾新制,即依朝命宣示
その他、魏書ではちらほら麟趾にまつわる話が見える。この辺りはさすがお馬さんとともにあるお国、と言う印象である。無論こじつけである。
・魏書9 元詡
實望穹靈降祐,麟趾眾繁。
・魏書107.1 律暦上
龜為水畜,實符魏德;修母子應,義當麟趾。
■孔子は素王
漢書100.1 敍傳上
虞韶美而儀鳳兮,孔忘味於千載。素文信而底麟兮,漢賓祚于異代。
班固が漢書巻末で幽通賦をものし「ワイのやりたいこと」を高らかに歌い上げる、その一節である。曰く舜が作った曲が鳳凰を喜ばせ、また孔子も肉の味を忘れるほど感動した、そこで孔子が「素王」、王位なくして王の仕事を請け負う者を讃えれば麒麟が喜び、故に漢は「素王」たる孔子の子孫を大切にしているよ、と歌われておる。えっ、孔子のお仕事のどこに王としてのお仕事が……? 「本を書く」のは王様の仕事ではないですよね?
毛詩正義
https://zh.wikisource.org/wiki/%E6%AF%9B%E8%A9%A9%E6%AD%A3%E7%BE%A9/%E5%8D%B7%E4%B8%80#%E3%80%8A%E9%BA%9F%E4%B9%8B%E8%B6%BE%E3%80%8B
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