にわか雨

天候は日々の慰めである。変わりばえのしない日々の中で、唯一劇的な変化をするものであることさえある。

にわか雨はその最たる例だ。明るい灰色の雲が風に乗って流れている。陽光は薄く、湿りけが空気に満ちている。突如として雨が降りだす。水滴が打ちつけ、全身が濡れる。このとき、もはや人間は「雨に濡れている」以外のことを考えることができない。雑事の一切は雨によって流され、一時の爽やかさをもたらす。

にわか雨に備えて傘を持ち歩くのは、この天然の清涼剤の散布を拒むことにほかならない。

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