全てが終わったような世界で、ただ一人

「……う……ん……?」


 全身にかすかな痛みが走る。辺りを見渡してみるが、誰もいない。なにもない。

 何も無かったはずの場所に、虹色が生まれる。何年も見てきたその輝きは、またリィエルの前に現れた。


「駄目だった……?」


 誰もいない大地。当然、レインの姿もない。また終わることは出来なかった。大切なものを、たったひとつだけだった宝物を失ってしまっても。

 自分に嘘をつく。レインを殺したのも、リィエル自身が死ぬ事が出来なかったのも、全て誰の所為かくらいわかっている。

 けれど最後に、生きたいと願ってしまった。


「……私はもう、一人で大丈夫よ」


 風にそう呟く。その言葉は誰に聞かせるわけでもなく、ただ風に乗せて。

 しかし、その声を聞くものは確かにいた。

 終末の蝶。リィエルがそう名付けたそれは、淡い光を放ち、ゆらめき、消えた。

 一人ぼっち。慣れたものだ。それでも、もうやっと楽になれると、解放されると思うと、少し楽だった。


「すぐに行くから」


 死後、共にいれるとは限らない。リィエルはたくさんの命を奪ったから。

 だけど、だからこそ。もう迷いはなかった。

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終焉の少女 神凪柑奈 @Hohoemi

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