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それでも、ときおり、


夕陽が海のむこうにしずみかけると、


やしの木にそよぐ風のあいだから、


かすかにうたがきこえることがあるという。


夜をむかえる前に巣にもどろうと


はばたく鳥たちの眼の中に、


岬のふちに岩のようにすわる


うたい手のすがたが見えるという。




島は、うたい手とうたをおぼえている。

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南の海の島のうたびと 安岐ルオウ @akiruo

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