第五話:学校の始まり

「ご主人様。学校に遅刻しますよ」


 テリエシャに肩を揺さぶられ、俺の眠気は完全に消えた。昨日の出来事もあり、俺は少し顔を赤くしていた。


「おはようございます。朝食の準備が出来ていますよ」

「うん。ありがと」


 何気ない返事をして、リビングへ向かう。


 「そういえば」と、俺はある事を思い出した。

 今日から学校だった。という事を――。


 テーブルに置いてあったトーストを見る。

 マーガリンだけが塗ってあり、至ってシンプルな朝食。トーストの横には、牛乳の入ったコップが置いてあった。


 でも、俺はシンプル過ぎる朝食が好きだ。朝らしく、落ち着いていられる。


「いただきます」


 マーガリンの塗ってあるトーストを、早速口に運ぶ。パンを焼いてマーガリンを塗る。それだけの手間に、これだけの味が作れる事が、俺は凄いと思った。

 インスタント食品も似たようなものだ。


「お弁当はカバンの中に入れておきましたので、残さず食べて下さいね」

「分かった。ありがと」


 俺の嫌いな食べ物ばかり入れてないよな?

 一瞬、俺は心配になった。


「デザートも入ってますので」

「マジか!」


 これから遠足ですか、俺は。

 少しだけ、俺は子供心を思い出した。それを見たテリエシャは、やはり笑っていた。


 彼女も、トーストに似ていると思った。


「それじゃ、行ってきます」

「はい、行ってらっしゃいませ」


 手を前で組み、着こなしたメイド服で一礼をする。今日も、テリエシャという女性は美しかった――。



 学校中にチャイムの大音量が響き、三限が終わった。

 一から三限は、集会と夏休みの課題回収だった為、結構楽だった。とは言っても、まだ四から六限が残っているが。


「圭哉ー、聞いてくれよ!」

「どうした寛太かんた


 遠くの席だというのに、寺谷てらや寛太かんたは毎時間の放課に俺の所にやってくる。まあ、他に話す人がいないのだろう。可哀想だな。


「昨日友達とゲーセン行ったんだけどさ」


 友達いたんだ。


「二千円使ってもクマのぬいぐるみが取れなかったんだぜ? 友達に止められなかったら、取れるまでやってたわ!」

「へ、へぇ」


 クマのぬいぐるみ……。友達って、絶対女だよな。寛太がクマのぬいぐるみを欲しがる訳も無いし。

 という事は、もしかしてプレゼント!?


「寛太、頑張れよ」

「え、何これ」


 ポケットから取り出した千円札を、寛太の手に乗せる。


「ちょっと少ないけど、これで彼女と何か食べてこい」

「彼女なんていないんだけど!? いや、相手が女なのは認めるけど……っていうか、花音かのんの事だからな!?」


 花音、寺谷花音てらやかのんの事だろうか。そうか、そういえば寛太には妹がいたんだっけ。


「寛太、昼のお供は空いてる?」

「空いてる空いてる! 誰もいないわ!」


 笑顔でそう語るが、自分がとっても寂しい事を言っている事には、自覚がないようだ。


「圭哉君、お昼……私も一緒に食べていいかな」


 そう俺に声を掛けてきたのは、斜め前にいた、幼馴染の寺澤てらさわ芽瑠めるだった。


「ああ、別にいいよ。寛太もいいよな?」

「当然! こんな美少女と食事に同席出来るなんて、嬉しくて死ぬわ!」


 相変わらず大袈裟でうるさいが、あながち間違ってはいない。

 学年でトップレベルの顔面偏差値を誇る芽瑠であり、今までで多くの男子に告白されただとか。


 告白の回数だけ、幼馴染である俺に相談して来た事を覚えている。

 まあ、毎回似たようなものなので、それほど力にはなっていないが。


「私も、圭哉君と一緒に食べれて、嬉しい」


 小さな声で呟く花音の声は、俺の耳には届いていなかった。でも、彼女の笑顔を見れば、喜んでいる事くらいは察しがついた。


――――――――――――――――――――

 最近は在庫がピンチです……!

 しかも月曜から学校(苦笑)。とりあえず更新は間に合わせますのでご安心をm(_ _)m

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