第四話:夜闇
あっという間に、一日が終わりを迎えようとしていた。窓からは、満月が見えた。
俺は布団の中に入り、少しだけ考え事をしていた。
あの時、彼女が嘘をついた理由。
一度、テリエシャと話す必要がありそうだ。けど、親父のメッセージを見た時のあの苦笑い。あれが、どうしても気になって訊けないのだ。
テリエシャと初めて会ったのは、俺が中学生の頃の事。気が付けば、親父が雇っていた。
最初は、そういう趣味なのだろう。そう思っていた。メイド服を着た胸の大きい美女。母さんがかなり嫉妬していた。
両親よりも長い間家にいる俺は、彼女と同じ屋根の下でいる時間が誰よりも長かった。
彼女は面倒見が良くて、ひとりの俺にもよく話し掛けてくれた。それほど良い反応は出来なかったけど。
高校生になった俺は、一人暮らしを始めた。両親も、心配していた事を覚えている。
ひとりでいる時間は、とても気が楽だった。学校も前より近くなったし、副業にも集中出来るようになった。
でも、寂しさは心の中で蓄積する一方だった。俺は、笑顔が下手なのだろう。
「失礼します。もう寝てしまいましたか?」
突然ドアが開き、驚いて寝たフリをする。ここから起きるのはあまりにも不自然である為、俺はそのまま寝たフリをしていた。
ベッドが少し揺れ、テリエシャが乗った事を理解する。
「疲れましたよね。ふふ」
髪をゆっくりと撫でられる。羞恥心はあったが、どうしようもなかったので、そのまま寝たフリを続けていた。
「あなたを一人にはしませんよ。だから……安心して、おやすみなさい」
俺は、笑顔が下手だ。
彼女を、テリエシャを、笑って誤魔化す事が出来なかった。
この寂しさも、悔しさも、全部。
一人では、背負いきれないのだろうか。
テリエシャが何処かに行く感覚を覚え、俺はそのまま眠りについた。
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三話・四話は短めだったので同時投稿とさせて頂きました。
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